【ソムメモ】品種探求シリーズ#8『リースリング その3』世界の産地【ソムリエ解説】
最終更新日: 2025年1月6日
ようこそ、「品種探求シリーズ」へ!
このシリーズでは、ワインの世界をより深く知り、楽しんでいただくために、各ブドウ品種の特徴をわかりやすく解説しています。今回のテーマは「リースリング」。特に、世界各地のリースリングが持つ個性とその違いに焦点を当てていきます。
リースリングは、フレッシュな酸味と華やかな香りが特徴の白ワイン用ブドウ品種ですが、産地の気候や土壌の違いによって、驚くほど多様な味わいを見せてくれる品種でもあります。例えば、ドイツのリースリングは高い酸味とミネラル感が際立ち、オーストラリアのリースリングは鋭い酸味とライムの香りが特徴です。
本記事では、ヨーロッパ、ニューワールド、アジアの代表的なリースリング産地ごとに、香りや味わい、スタイルの違いを比較しながら、その魅力を丁寧に解説していきます。さらに、各地域で生まれる個性の違いが、どのように料理とのペアリングやワインの楽しみ方に影響するのかもご紹介します。
これからリースリングをもっと楽しみたい方、産地ごとの違いを知ってみたい方にとって、きっと新しい発見のある内容となるでしょう。それでは、リースリングの世界へ一緒に探求していきましょう!
内容概要
§1.ヨーロッパの産地と特徴
・ドイツ
モーゼル
ラインガウ
ファルツ
・フランス(アルザス地方)
・オーストリア
・スイス
・イタリア北部
・ハンガリー
§2.ニューワールドの産地と特徴
・アメリカ
ワシントン州
ナパ ヴァレー
・オーストラリア
クレアヴァレー
イーデンヴァレー
・ニュージーランド
マールボロ
セントラル オタゴ
§3. アジアの産地と特徴
§4. 比較とまとめ
§1.ヨーロッパの産地と特徴
ドイツ
ドイツはリースリングの発祥地であり、最も高品質なリースリングを生産する国として知られています。冷涼な気候と多様な土壌、長い歴史がリースリングの品質を支えています。ドイツ国内の主要なリースリング産地として、「モーゼル」「ラインガウ」「ファルツ」が特に有名です。それぞれの地域は独自のテロワールを反映し、異なる個性を持つリースリングを生み出しています。
<モーゼル地方>
モーゼル地方は、ドイツ西部に位置し、リースリングの世界的な名産地として知られています。モーゼル川沿いの急斜面に広がる畑は、見た目の美しさだけでなく、ブドウ栽培にとって理想的な条件を備えています。
気候と土壌:
冷涼な気候と粘板岩(スレート)の土壌が特徴。スレートは日中の熱を蓄え、夜間に放熱するため、ブドウの成熟を助け、酸味とフレッシュさを維持します。
ワインの特徴:
モーゼルのリースリングは、軽やかなボディとシャープな酸味、繊細でフルーティーなアロマが特徴です。青リンゴ、ライム、白桃の香りに加え、熟成が進むと蜂蜜やペトロール香(石油香)が現れます。
スタイル:
辛口から甘口まで幅広く生産されますが、特に甘口のカビネット(Kabinett)やシュペートレーゼ(Spätlese)の評価が高く、貴腐ワインのトロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)は世界最高級のデザートワインとして知られています。
<ラインガウ地方>
ラインガウ地方は、ドイツのリースリングの歴史的中心地の一つであり、ライン川沿いの肥沃な土地で生産されています。修道士によるリースリングの発展が特に深く根付いている地域でもあります。
気候と土壌:
ライン川がもたらす穏やかな気候と、ローム質や粘土質の土壌が特徴。温暖で日照時間が長く、ブドウがゆっくり成熟することで、複雑な風味を持つワインが生まれます。
ワインの特徴:
ラインガウのリースリングは、力強さとエレガンスを兼ね備えた辛口ワインが多いのが特徴です。酸味がしっかりしており、白桃やシトラス、時にハーブのニュアンスが感じられる複雑な味わいです。
スタイル:
特に辛口の**グローセス・ゲヴェックス(Großes Gewächs, GG)**が有名で、特級畑で収穫されたリースリングのみがこの称号を得ることができます。熟成ポテンシャルも高く、10年以上の熟成で驚くほど複雑な香りを楽しめます。
<ファルツ地方>
ファルツ地方は、ドイツで2番目に広大なワイン産地であり、リースリング生産の規模としてもトップクラスです。温暖な気候と多様な土壌が、果実味豊かなリースリングを生み出しています。
気候と土壌:
比較的温暖な気候で、日照量も多く、リースリングの果実味をしっかり引き出します。土壌は砂岩やローム質など多様で、畑ごとに異なる個性のワインが作られます。
ワインの特徴:
ファルツのリースリングは、ふくよかな果実味と穏やかな酸味が特徴です。熟した洋ナシや白桃、トロピカルフルーツのような香りが感じられ、モーゼルやラインガウと比べると、より親しみやすい味わいになります。
スタイル:
主に辛口のワインが多く、デイリーワインとしても人気がありますが、特級畑で生産されるGGリースリングも存在し、高い品質で知られています。
フランス(アルザス地方)
フランスのアルザス地方は、ドイツと国境を接する地域に位置し、リースリングの名産地として世界的に高く評価されています。この地域のリースリングは、辛口でミネラル感が豊か、そして長期熟成にも耐える高品質なワインが生産されています。ドイツとは異なる独自のスタイルを確立し、フランス白ワインの中でも特別な存在です。
アルザス地方の地理と気候
アルザス地方は、フランス北東部、ヴォージュ山脈とライン川に挟まれた地域に位置しています。この地理的要素が、リースリングの栽培に理想的な環境を提供しています。
冷涼で乾燥した気候:
ヴォージュ山脈が西風を遮ることで降雨量が非常に少なく、冷涼で乾燥した気候が特徴です。これにより、ブドウがゆっくりと成熟し、高い酸を保ちながら豊かなアロマを蓄えます。
土壌の多様性:
アルザス地方は非常に多様な土壌構成を持っており、石灰岩、砂岩、花崗岩、粘土などが混在しています。このため、畑ごとにリースリングの風味に微妙な違いが生まれるのが特徴です。
アルザスのリースリングの特徴
アルザスのリースリングは、辛口で酸味がしっかりしており、ミネラル感が豊富です。フルーティーでありながらも、上品で洗練された味わいが特徴です。
香りの特徴:
レモン、ライム、白桃、リンゴなどの柑橘系や果実系の香りに加え、ミネラル感や白い花のニュアンスも感じられます。熟成が進むと、蜂蜜やナッツ、時にはペトロール香(石油香)が現れます。
味わいの特徴:
辛口が主流で、シャープな酸味と凝縮された果実味がバランスよく調和しています。ドイツのリースリングよりもボディがしっかりしており、厚みのある味わいが特徴的です。
熟成ポテンシャル:
アルザスのリースリングは、酸味とミネラル感が高いため、長期熟成に適しています。10年、20年と熟成させることで、より複雑で深みのある味わいへと変化します。
格付けとグラン・クリュ
アルザス地方では、1975年に**グラン・クリュ(Grand Cru)**の制度が導入され、特に優れた畑のリースリングが認定されています。グラン・クリュのワインは、単一畑の特徴を最大限に表現し、非常に高品質です。
有名なグラン・クリュ畑:
シュロスベルグ(Schlossberg): フローラルでエレガントな酸味が特徴。
ホーレンベルグ(Hohenberg): リッチで骨格のある味わいが魅力。
ゾンネングランツ(Sonnenglanz): ミネラル感と熟成ポテンシャルの高さで有名。
グラン・クリュのリースリングは、特別な日や長期熟成を楽しみたい時に最適です。
オーストリア
オーストリアは、ヨーロッパ屈指の高品質な辛口リースリングを生産する国です。特に、ドナウ川沿いのワッハウ、カンプタール、クレムスタールといった地域が世界的に評価されています。
気候と土壌
冷涼で乾燥した気候が特徴で、昼夜の寒暖差が大きいため、ブドウはゆっくりと成熟し、高い酸を保ちながら果実味をしっかりと蓄えます。
土壌は主にロイマー土壌(風化した花崗岩や砂質の混合土壌)が中心で、ワインに強いミネラル感と硬質な印象を与えます。
ワインの特徴
オーストリアのリースリングは、シャープな酸味とミネラル感が際立つ辛口スタイルが中心です。
香り:
レモンやライム、白桃、ハーブのようなフレッシュな香り
味わい:
酸味がしっかりと感じられ、ミネラル感が豊富で、アフターにかすかな塩味が感じられることもあります。
有名なリースリング産地
ヴァッハウ:
高品質で長期熟成可能な辛口リースリングが中心。熟成とともに蜂蜜やナッツのニュアンスが加わります。
カンプタール:
ミネラル感と果実味のバランスが取れたエレガントなリースリング。
クレムスタール:
果実味豊かで、比較的親しみやすいスタイルのリースリング。
ワインの格付け
オーストリアでは、リースリングの品質を格付けするための「ワッハウ格付け」が存在します。
シュタインフェーダー(Steinfeder):
アルコール度数が低く、軽やかでフルーティーなスタイル。
フェーダーシュピール(Federspiel):
中程度のボディで、果実味と酸味のバランスが良い辛口。
スマラクト(Smaragd):
最高級の格付けで、凝縮感のあるリッチで熟成向きの辛口ワイン。
スイス
スイスはリースリングの生産量こそ少ないものの、冷涼なアルプスの気候を活かした高品質なリースリングを生産しています。主にヴァレー州やグラウビュンデン州などの山間部で栽培されています。
気候と土壌
アルプスの冷涼な気候と高い標高が特徴で、寒暖差が激しいため、リースリングの酸味が非常にシャープに保たれます。
石灰岩質や砂質土壌が多く、ミネラル感の強いワインが生まれます。
ワインの特徴
スイスのリースリングは、冷涼な気候の影響で非常にフレッシュで繊細な味わいが特徴です。
香り:
シトラス系(レモン、グレープフルーツ)、白い花のアロマ
味わい:
シャープな酸味と繊細な果実味、余韻にはミネラル感
代表的な生産地域
ヴァレー州:
標高の高い斜面での栽培が中心で、酸味が際立つフレッシュなスタイルのリースリングが多い。
グラウビュンデン州:
比較的温暖な気候で、果実味と酸味のバランスが取れたエレガントなスタイルが特徴。
イタリア北部
イタリア北部は、アルプス山脈に近く、冷涼でブドウの酸味を保持しやすい地域です。特に、トレンティーノ=アルト・アディジェ州やロンバルディア州では高品質なリースリングが生産されています。
気候と土壌
冷涼な山岳気候:
アルプス山脈の麓に位置し、日中の暖かさと夜間の冷涼さの寒暖差が、リースリングの酸味を保つのに役立っています。
土壌:
石灰岩質、花崗岩質、砂質土壌が多く、ミネラル感の強いワインを生み出します。
ワインの特徴
イタリア北部のリースリングは、辛口から半甘口まで幅広いスタイルが見られます。
香り:
レモンや青リンゴ、ライムに加え、白い花のフローラルなアロマ
味わい:
フレッシュな酸味と果実味がバランス良く、ミネラル感が豊か
スタイル:
辛口の爽やかなリースリング(トレンティーノ)
半甘口でリッチなスタイル(アルト・アディジェ)
代表的な生産地域
トレンティーノ=アルト・アディジェ州:
イタリア北部で最も高品質なリースリングを生産する地域。酸味が際立ち、フレッシュで軽快な味わいが特徴。
ロンバルディア州:
フランチャコルタのスパークリングワインで有名ですが、冷涼な地域でリースリングも栽培され、複雑でリッチなスタイルの辛口ワインが生産されています。
ハンガリー
ハンガリーでは、リースリングが「リースリング・イタリコ(Riesling Italico)」または「オラスリズリング」として知られています。特にバラトン湖周辺やトカイ地方でリースリングの生産が盛んです。
気候と土壌
温暖で冷涼な湖畔気候:
バラトン湖周辺では、湖の影響で冷涼な微気候が形成され、ブドウの酸味を保ちながらも熟度が高まります。
土壌:
火山性土壌や石灰岩土壌が多く、ワインにミネラル感をもたらします。
ワインの特徴
ハンガリーのリースリングは、イタリアのものよりも丸みのある酸味と柔らかな果実味が特徴です。
香り:
熟したリンゴ、アプリコット、洋ナシ、白い花
味わい:
柔らかな酸味と果実味が調和し、心地よい余韻が続きます。
スタイル:
辛口が中心ですが、一部で甘口のデザートワインも生産されています。
代表的な生産地域
バラトン湖地方:
辛口でフルーティーなリースリングが中心。
トカイ地方:
リースリング単体の甘口ワインは少なく、トカイワインの補助品種として使用されることが多い。
§2.ニューワールドの産地と特徴
アメリカ
アメリカでは、リースリングは冷涼な地域での栽培に適しているため、特にワシントン州とカリフォルニア州のナパ・ヴァレーで高品質なワインが生産されています。ドイツの伝統を意識しつつ、アメリカ独自の気候と醸造技術を活かした、フルーティーで親しみやすいリースリングが特徴です。
<ワシントン州>
ワシントン州は、アメリカで最もリースリングの生産量が多い地域です。冷涼で乾燥した気候が、リースリングの栽培に適した環境を提供しています。
気候と土壌
冷涼で乾燥した気候:
日中は温暖ですが、夜間の気温が下がることでブドウの酸味がしっかり保たれます。
土壌:
火山性土壌やローム質の土壌が多く、ミネラル感のあるワインを生み出します。
ワインの特徴
ワシントン州のリースリングは、果実味豊かで親しみやすいスタイルが多く、辛口から甘口まで幅広く生産されています。
香り:
ピーチ、アプリコット、メロン、シトラス系の香り
味わい:
酸味が柔らかく、果実味が豊かでフルーティーな印象。熟成により蜂蜜やナッツのニュアンスも出てきます。
代表的な生産地域
コロンビア・ヴァレー:
ワシントン州最大のワイン産地であり、リースリングの主要産地。フルーティーでバランスの取れたスタイルのワインが多い。
ヤキマ・ヴァレー:
高品質な辛口リースリングの産地として有名。
レイク・シェラン:
冷涼な気候で、エレガントで酸味の際立つリースリングが生産されています。
<ナパ ヴァレー>
ナパ・ヴァレーは主にカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネの生産で有名ですが、リースリングの生産も少量ながら行われています。温暖な気候のため、果実味が豊かで親しみやすいリースリングが作られています。
気候と土壌
温暖な地中海性気候:
ワシントン州より温暖で、果実の熟度が高まりやすい環境です。
土壌:
火山性土壌や沖積土壌が多く、ワインにリッチな果実味を与えます。
ワインの特徴
ナパ・ヴァレーのリースリングは、温暖な気候の影響で、よりリッチで熟した果実味が特徴です。
香り:
洋ナシ、マンゴー、パイナップル、シトラス
味わい:
柔らかな酸味とボリュームのある果実味。辛口でもやや甘味を感じるスタイルが多い。
スタイル:
ほとんどが辛口で、デイリーワインとして親しみやすいスタイルです。
オーストラリア
オーストラリアは、リースリングの生産地として世界的に高く評価される国の一つです。特に南オーストラリア州のクレア・ヴァレーとイーデン・ヴァレーは、リースリングの名産地として知られています。冷涼な気候と独特の土壌が、オーストラリア独自の個性を持つリースリングを生み出しています。
<クレアヴァレー>
クレア・ヴァレーは、オーストラリア南部に位置する高品質なリースリングの名産地であり、オーストラリアを代表する辛口リースリングの生産地として知られています。
気候と土壌
冷涼で乾燥した地中海性気候:
昼夜の寒暖差が大きく、ブドウがゆっくり成熟することで、酸味をしっかりと保ちながら果実の凝縮感が増します。
土壌:
石灰岩質土壌とシスト(片岩)の土壌が多く、ミネラル感と酸のバランスが良いリースリングが生まれます。
ワインの特徴
クレア・ヴァレーのリースリングは、オーストラリアリースリングの典型とも言えるシャープな酸味と柑橘系のフレッシュな香りが特徴です。
香り:
ライム、レモン、グリーンアップル、フローラルな香り
味わい:
鋭い酸味とミネラル感が際立ち、爽やかでフレッシュな口当たり
熟成ポテンシャル:
酸がしっかりしているため、長期熟成にも適しており、熟成によって蜂蜜やナッツ、ペトロール香(石油香)が現れます。
代表的な生産者
ジム・バリー(Jim Barry):
クレア・ヴァレーを代表する生産者の一つで、酸味と果実味のバランスが取れたクラシックなリースリングを生産。
グロセット(Grosset):
高品質でエレガントなリースリングを生産し、特に「ポーリッシュ・ヒル」のリースリングが有名です。
<イーデンヴァレー>
イーデン・ヴァレーは、クレア・ヴァレーと同じ南オーストラリア州に位置していますが、標高が高く、より冷涼な気候が特徴です。リースリングの品質の高さから「オーストラリアのモーゼル」とも称されることがあります。
気候と土壌
冷涼で標高の高い気候:
昼夜の寒暖差がさらに大きく、ブドウの酸味をよりシャープに保つことができます。
土壌:
花崗岩質土壌が中心で、石灰岩に比べるとフローラルな香りがより際立つのが特徴です。
ワインの特徴
イーデン・ヴァレーのリースリングは、クレア・ヴァレーに比べてややエレガントでフローラルな印象が強いです。
香り:
ライム、レモングラス、ジャスミンなどのフローラルな香り
味わい:
鋭い酸味と繊細なミネラル感、果実味のバランスが取れた味わい
熟成ポテンシャル:
長期熟成に適しており、熟成することでハチミツやナッツ、ペトロール香が顕著になります。
代表的な生産者
ヘンチキ(Henschke):
歴史あるワイナリーで、「ジュリアス・リースリング」はイーデン・ヴァレーの典型とされるワイン。
ピーター・レーマン(Peter Lehmann):
シャープな酸味と凝縮した果実味が特徴の高品質リースリングを生産。
ニュージーランド
ニュージーランドのリースリングは、主に南島の冷涼な地域で栽培されています。特にマールボロやセントラル・オタゴといった地域が高品質なリースリングの産地として有名です。
<マールボロ>
マールボロは、ニュージーランドで最も有名なワイン産地であり、リースリングの主要な生産地の一つです。特にソーヴィニヨン・ブランで知られていますが、リースリングの品質も非常に高く評価されています。
気候と土壌:
冷涼で乾燥した海洋性気候。昼夜の寒暖差が大きく、酸味の保持に最適。
土壌は主に石灰岩質や砂利質で、ミネラル感のあるワインを生み出します。
ワインの特徴
香り:
青リンゴ、レモン、白桃、ライム、フローラルなアロマ
味わい:
鮮やかな酸味とフルーティーな果実味が特徴。辛口からやや甘口まで幅広いスタイルで生産されています。
スタイル:
クリアでシャープな辛口が中心ですが、半甘口のスタイルも人気です。
代表的な生産者:
クラウディー・ベイ(Cloudy Bay)
フレッシュでクリアな酸味の辛口リースリングが特徴。
セレシアル・リースリング(Seresin Estate)
オーガニックとビオディナミ農法で知られる生産者。
<セントラル オタゴ>
セントラル・オタゴは、ニュージーランド最南端のワイン産地であり、冷涼な気候がリースリングの個性を際立たせています。特に、標高の高い畑で栽培されるリースリングは、酸味とミネラル感が際立ちます。
気候と土壌:
冷涼で乾燥した大陸性気候。昼夜の寒暖差が大きく、リースリングの酸をしっかり保つ。
土壌は石灰岩と粘土質の混合で、ミネラル感を伴うエレガントなスタイルを生む。
ワインの特徴:
香り:
レモン、グレープフルーツ、ジャスミン、石灰のニュアンス
味わい:
キリッとした酸味と豊かな果実味、余韻には心地よいミネラル感が続く
スタイル:
辛口のリースリングが中心ですが、デザートワインや遅摘みリースリングも少量生産されています。
代表的な生産者:
フェルトン・ロード(Felton Road)
自然派で高品質な辛口リースリングを生産。
マウント・ディフィカルティ(Mount Difficulty)
ミネラル感とフルーティーさを兼ね備えたリースリングが特徴。
§3. アジアの産地と特徴
日本
日本でもリースリングの栽培が徐々に広がっており、特に冷涼な気候を持つ地域で注目されています。リースリングの持つ繊細な酸味とフレッシュな果実味が、日本の和食と見事に調和するため、ワイン愛好家からも関心を集めています。
<山梨>
山梨県は、日本有数のワイン産地として知られ、リースリングの栽培も少量ながら行われています。特に、勝沼エリアが有名で、冷涼な気候を活かしたエレガントなリースリングが生産されています。
気候と土壌
温暖な内陸性気候:
日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きいため、酸味をしっかり保ちながら果実が熟します。
土壌:
火山性土壌と粘土質土壌が混在しており、果実味豊かなワインを生み出します。
ワインの特徴
山梨のリースリングは、果実味が強く親しみやすいスタイルが多く、比較的柔らかい酸味が特徴です。
香り:
青リンゴ、白桃、洋梨、レモンなどのフレッシュな香り
味わい:
穏やかな酸味とフルーティーな甘みのバランスが良く、和食に合う繊細な味わい
スタイル: 辛口からやや甘口のスタイルが中心。
代表的な生産者
グレイスワイン:
繊細でクリアな酸味と果実味のリースリングを生産。
シャトージュン:
フルーティーで親しみやすいリースリングを生産。
<長野>
長野県は、標高の高い冷涼な地域が多く、リースリングの栽培に適しています。特に、千曲川ワインバレーや東御市周辺で品質の高いリースリングが生産されています。
気候と土壌
冷涼な高原気候:
標高が高く、昼夜の寒暖差が大きいため、酸味がしっかりとしたブドウが育ちます。
土壌:
火山性土壌と砂質土壌が多く、ワインにミネラル感を与えます。
ワインの特徴
長野県のリースリングは、よりシャープで酸味が際立つスタイルが多いのが特徴です。
香り:
レモン、グレープフルーツ、白い花、ハーブのニュアンス
味わい:
キリッとした酸味とすっきりした果実味が特徴で、ミネラル感も強い
スタイル:
辛口中心で、軽快な飲み口のワインが多い。
代表的な生産者
ヴィラデストワイナリー:
長野の冷涼な気候を活かした酸味の鮮やかなリースリングを生産。
アルプスワイン:
果実味と酸味のバランスが取れたフレッシュなリースリングを手掛けています。
§4. 比較とまとめ
リースリングは、産地の気候や土壌の影響を強く受け、地域ごとに異なるスタイルを持つのが大きな魅力です。
ドイツ:
酸味が非常に高く、ミネラル豊富で辛口から極甘口まで幅広い。
アルザス:
辛口が主流で、ボディがしっかりとしたスタイル。
オーストリア:
シャープな酸味とミネラル感が際立つ辛口リースリング。
アメリカ:
果実味豊かで親しみやすい辛口から甘口まで。
オーストラリア:
酸味とライムの風味が際立つ辛口リースリング。
ニュージーランド:
爽やかな酸味とフルーティーさが特徴。
日本:
和食に合わせやすい穏やかな酸味と繊細な果実味。
地域 | 酸味の強さ | 香りの特徴 | 味わいの特徴 | 代表的スタイル |
---|---|---|---|---|
ドイツ | 非常に高い | レモン、ライム、青リンゴ、ペトロール香 | シャープで軽快、甘口も豊富 | 辛口~甘口 |
フランス(アルザス) | 高い | シトラス、白桃、花、ミネラル | ボディがしっかり、ミネラル感が豊か | 辛口 |
オーストリア | 高い | ライム、リンゴ、ハーブ | 鋭い酸味と果実の凝縮感、ミネラル豊か | 辛口 |
アメリカ(ワシントン州) | 中程度 | ピーチ、アプリコット、メロン | 果実味豊かで酸味穏やか | 辛口~甘口 |
オーストラリア | 非常に高い | ライム、レモングラス、ハーブ | シャープでミネラル感豊か、熟成でペトロール香 | 辛口 |
ニュージーランド | 高め | 青リンゴ、ライム、白桃 | 爽やかな酸味とジューシーな果実味 | 辛口~やや甘口 |
日本(山梨、長野) | 中程度 | 青リンゴ、白桃、花 | 穏やかな酸味と柔らかな果実味 | 辛口~やや甘口 |
リースリングは、冷涼な産地から温暖な産地まで幅広く栽培され、産地ごとに個性豊かな味わいを表現するブドウ品種です。
次回は、「リースリングの醸造と栽培の秘密」に焦点を当て、なぜリースリングが“繊細で扱いが難しい”とされるのか、また醸造の工夫について詳しく解説します。お楽しみに!