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【ソムメモ】品種探求シリーズ#23『シュナンブラン その2(中編)』産地と造り【ソムリエ解説】

【ソムメモ】品種探求シリーズ#23『シュナンブラン その2(中編)』産地と造り【ソムリエ解説】

最終更新日: 2025年2月8日

ようこそ、品種探求シリーズへ!

ワイン好きなら、きっと一度は耳にしたことがある シュナン・ブラン(Chenin Blanc)。フランス・ロワール地方を故郷に持つこの品種は、驚くほどの多様性を誇ります。辛口から甘口、スパークリングから貴腐ワインまで、造り手のアプローチ次第でまったく異なる表情を見せるのが魅力です。

さらに、この品種の面白さは 世界中で適応できる柔軟性 にあります。冷涼なロワール地方ではエレガントでミネラル感のあるワインに、温暖な南アフリカでは豊かな果実味とボリュームのあるワインに仕上がります。カリフォルニアやオーストラリアでは、近年 新たなスタイルのシュナン・ブラン も次々に生まれ、ナチュラルワインやオレンジワインの分野でも注目を集めています。

今回は、そんなシュナン・ブランの 産地ごとの個性と造りの違い を深掘りしていきます。ロワール地方のクラシックなスタイルから、南アフリカの革新的なアプローチまで、幅広い視点でその魅力を探っていきましょう!

内容概要

§1. 世界の主要産地とその特徴

・フランス:ロワール地方
 サヴニエール(ミネラル感と骨格のある辛口)
 ヴーヴレ(辛口から甘口、スパークリングまで多様なスタイル)
 カール・ド・ショーム、ボンヌゾー(貴腐ワインの名産地)

・南アフリカ:シュナン・ブランの新天地

・アメリカ:カリフォルニア

・その他のシュナン ブランの産地
 アルゼンチン
 オーストラリア
 ニュージーランド

§2. シュナン・ブランの栽培特性と課題

・栽培環境への適応力(冷涼・温暖気候での違い)
・主要な課題(病害、収量管理、成熟度のバランス)
・世界各地での栽培スタイルの違い

§3. シュナン・ブランの醸造スタイル

・発酵容器とスタイルの違い
 ステンレスタンク vs. オーク樽熟成
 コンクリートタンクやアンフォラの活用
・発酵・熟成による味わいの変化
 シュール・リー製法(リッチなテクスチャー)
 マロラクティック発酵の有無
・特殊な醸造技術(貴腐ワイン、遅摘み、ペティヤン・ナチュレル)

§4. まとめ

§1. 世界の主要産地とその特徴

フランス:ロワール地方

シュナン・ブランといえば、やっぱりロワール地方。この地は、シュナン・ブランが最も表情豊かに輝く場所のひとつです。冷涼な気候と多彩な土壌が織りなすワインは、産地ごとに驚くほど違った個性を見せてくれます。

サヴニエール(Savennières):ミネラル感と骨格のある辛口

ロワールのアンジュー地区にあるサヴニエールは、シュナン・ブランの中でも特に骨太でストラクチャーのある辛口ワインが生まれる場所。シスト(片岩)を多く含む土壌が、力強いミネラル感としっかりとした酸を生み出します。樽熟成のニュアンスが加わると、さらに奥行きのある味わいに。

味わいの特徴

・きりっとした酸とミネラル感が際立つ
・フローラルやハーブの香りがほのかに漂う
・長期熟成も期待できる奥深さ

ワイン好きなら、一度は試してほしい産地です。代表的な造り手には、ニコラ・ジョリーやドメーヌ・オー・モワンヌなどがあり、それぞれに個性あふれるワインを造っています。

ヴーヴレ(Vouvray):スタイルの多彩さが魅力

トゥーレーヌ地区に位置するヴーヴレは、シュナン・ブランの多様性を存分に楽しめる場所。辛口(Sec)、中辛口(Demi-Sec)、甘口(Moelleux)、さらにはスパークリングまで、いろんなスタイルのワインが造られています。

味わいの特徴

・柑橘やリンゴ、白い花のアロマが華やか
・さわやかな酸と果実味のバランスが絶妙
・スパークリングは食前酒にもぴったり!

この地域のワインを楽しむなら、ドメーヌ・ユエやフィリップ・フォール=ブラックのワインをチェックしてみてください。どのスタイルも、シュナン・ブランの魅力をしっかり感じられるはず。

カール・ド・ショーム(Quarts de Chaume)&ボンヌゾー(Bonnezeaux):ロワールの甘美な貴腐ワイン

アンジュー地区には、甘口ワイン好きにはたまらない2つの名産地があります。カール・ド・ショームとボンヌゾーは、秋の霧が生み出す貴腐菌のおかげで、まるで液体の蜂蜜のような芳醇な甘口ワインが造られます。

味わいの特徴

・アプリコットやトロピカルフルーツの濃密なアロマ
・蜂蜜やカラメルのような奥深い甘さ
・シルクのようななめらかな口当たり

長期熟成することで、さらに味わいが進化していくのも魅力。ドメーヌ・デュ・クロ・ド・ラ・クーロンヌやドメーヌ・ド・ラ・ベルヴューといった造り手のワインは、ぜひ試してみてほしい一本です。

ロワール地方のシュナン・ブランは、飲むたびに新しい発見があるワインばかり。フレッシュで爽やかな辛口から、贅沢な甘口まで、気分やシーンに合わせて選ぶ楽しみが広がります。


南アフリカ:シュナン・ブランの新天地

ロワール地方の伝統的なシュナン・ブランを見てきましたが、次に注目したいのが 南アフリカ です。
実は、南アフリカは 世界最大のシュナン・ブラン生産国。フランスを凌ぐほどの広大な栽培面積を誇り、シュナン・ブランはまさにこの国の「顔」とも言える品種になっています。

南アフリカのシュナン・ブランの特徴

この地でシュナン・ブランが広まった背景には、歴史的な経緯があります。17世紀、オランダの東インド会社によってケープ地方にブドウが持ち込まれ、その中にシュナン・ブランが含まれていました。以来、気候の適応力や生産性の高さから南アフリカのワイン産業に根付いていったのです。

現在の南アフリカのシュナン・ブランは、次のような特徴を持っています:

フルーティーで親しみやすい味わい
リンゴやパイナップル、洋ナシ、白桃といった豊かな果実味

豊かな酸味
冷涼な気候の地域ではフレッシュでキリッとした酸が際立つ

多彩なスタイル
ステンレスタンク主体のフレッシュなタイプから、オーク樽を使用した複雑なタイプまで幅広い

産地ごとの個性

南アフリカのシュナン・ブランは主に 沿岸地域(コースタル・リージョン) で栽培されています。なかでも、代表的な産地として ステレンボッシュ(Stellenbosch)スワートランド(Swartland)パール(Paarl) などがあります。

・ステレンボッシュ(Stellenbosch)
南アフリカのワイン産業の中心地ともいえる地域。標高の高い畑が多く、昼夜の寒暖差があるため、酸のしっかりとしたシュナン・ブランが生まれます。樽発酵・樽熟成を取り入れる造り手も多く、エレガントで複雑なスタイルが特徴です。

・スワートランド(Swartland)
ここ10年で注目を集めているワイン産地。乾燥した気候のもと、古木のシュナン・ブランが育ち、凝縮感のあるワインが生まれます。自然派ワインの造り手が多く、アンフォラ(素焼きの壺)を使った醸造や、酸化防止剤を抑えたナチュラルな造りも見られます。

・パール(Paarl)
温暖な気候のため、リッチでボリューム感のあるスタイルが多い産地。しっかりとした果実味とややオイリーなテクスチャーが特徴で、熟成ポテンシャルのあるシュナン・ブランが造られます。

南アフリカならではの醸造スタイル

南アフリカのシュナン・ブランは、ロワール地方と同じく多様な造り方が採用されていますが、特に 樽の使い方 による違いが顕著です。

ステンレスタンク主体のフレッシュなスタイル
 → クリアでピュアな果実味を活かし、フレッシュな酸が楽しめる

オーク樽熟成によるリッチなスタイル
 → しっかりしたボディに、バニラやナッツのニュアンスが加わる

シュール・リー(Sur Lie)製法の活用
 → ワインによりコクと奥行きを与え、クリーミーな質感を生み出す

また、南アフリカでは シュナン・ブラン100%のペティヤン・ナチュレル(自然派スパークリング) や、 古木から造るオレンジワイン など、モダンで自由なアプローチも増えています。

代表的な生産者

南アフリカには、世界的に評価の高いシュナン・ブランの造り手が数多くいます。例えば…

ケン・フォレスター(Ken Forrester)
シュナン・ブランのスペシャリスト。手頃な価格のものから、長期熟成型の高品質なものまで幅広く展開

マリヌー・ワインズ(Mullineux Wines)
スワートランドの自然派ワインを牽引する造り手。古木シュナン・ブランの奥深い味わいが魅力

ボシュクルーフ(Boschendal)
エレガントでフードフレンドリーなシュナン・ブランを造る老舗ワイナリー

南アフリカのシュナン・ブランは、 「伝統」と「革新」が融合したエキサイティングなワイン です。
ロワール地方のクラシックなスタイルとはまた違い、果実味の豊かさとエネルギッシュな酸のバランスが楽しめるのが特徴。
産地ごとの個性や、造り手のこだわりによって、全く異なる表情を見せるのも面白いポイントです。

次回は、アメリカのシュナン・ブラン に焦点を当て、カリフォルニアの伝統的なスタイルとモダンなアプローチについて掘り下げていきます!


アメリカ:カリフォルニア

ロワール地方の伝統、南アフリカの革新に続いて、次に注目したいのが アメリカのシュナン・ブラン です。
特に カリフォルニア州 は、かつてシュナン・ブランの大規模生産地として知られていました。現在では栽培面積が減少しているものの、伝統を守る造り手や、新たなスタイルを模索するワイナリーによって、再び注目が集まっています。

カリフォルニアにおけるシュナン・ブランの歴史と現状

シュナン・ブランは、20世紀初頭にカリフォルニアに導入されました。当時は収量が高く、酸がしっかりしているため、ブレンド用や大量生産の白ワイン のベースとして使われることが多かったのです。
しかし、カリフォルニアのワイン業界が高品質志向に移行するにつれ、より人気のある シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン にその座を奪われ、シュナン・ブランの栽培面積は減少しました。

とはいえ、シュナン・ブランのポテンシャルを信じ、情熱を持って取り組む生産者たちが今もなお素晴らしいワインを生み出しています。近年では 単一畑のシュナン・ブランオールド・ヴァイン(古木) を活かしたワインが増え、シュナン・ブランの価値が再評価されるようになってきました。

主要産地とスタイル

カリフォルニアでは、以下の地域で個性的なシュナン・ブランが造られています。

・クラークスバーグ(Clarksburg)
サクラメント川流域に広がるクラークスバーグは、シュナン・ブランにとって理想的な環境を持つ産地。冷涼な気候と豊富な水資源のおかげで、酸がしっかりとしたバランスの良いワインが生まれます。
フレッシュでクリーンなスタイルが多く、青リンゴや洋ナシ、白い花の香りが特徴的 です。酸が高めで、料理との相性も抜群。

・ナパ・ヴァレー(Napa Valley)
ナパといえばカベルネ・ソーヴィニヨンが有名ですが、実は一部のワイナリーがシュナン・ブランにも力を入れています。ナパ産のシュナン・ブランは、樽発酵や長期熟成を取り入れることが多く、リッチで複雑なスタイルが特徴。
バニラやハチミツのニュアンスが加わり、ボディがしっかりしていて熟成ポテンシャルが高い のが魅力です。

・メンドシーノ(Mendocino)
自然派ワインの産地として注目されているメンドシーノでは、オーガニック栽培やビオディナミによるシュナン・ブランが増えています。特に 古木(オールド・ヴァイン) のブドウから造られるワインは、凝縮感がありながらもフレッシュさを保ち、独特の奥行きを持つ仕上がりになります。

カリフォルニアのシュナン・ブランの醸造スタイル

カリフォルニアのワイナリーでは、シュナン・ブランを 自由な発想 で醸造する傾向があります。伝統的な手法を取り入れつつ、新しい試みに挑戦する生産者が増えており、多様なスタイルが楽しめます。

ステンレスタンク発酵
 → クリスピーで爽やかな味わいを生み、果実味が際立つスタイルに

オーク樽発酵・熟成
 → バターやナッツの風味が加わり、厚みのあるリッチなワインに

シュール・リー(Sur Lie)製法
 → 滑らかでコクのあるテクスチャーを強調

オレンジワイン(スキンコンタクト)
 → 皮ごと発酵させ、タンニンと複雑味を持たせたユニークなスタイル

ペティヤン・ナチュレル(Pet-Nat)
 → 自然な発泡感を持つ軽やかなシュナン・ブランのスパークリング

代表的な生産者

現在、カリフォルニアでシュナン・ブランを手掛ける注目のワイナリーには、次のような名前が挙げられます。

サンドランズ・ワインズ(Sandlands Wines)
 → クラークスバーグやメンドシーノの古木を使い、エレガントなシュナン・ブランを生産

リトライ(Litre Wine)
 → ナチュラルワインの造り手。スキンコンタクトや低SO2のアプローチで個性的なスタイルを確立

パクストン・セラーズ(Paxton Cellars)
 → 伝統的な樽発酵スタイルを取り入れ、厚みのあるシュナン・ブランを造る

フラワーズ・ヴィンヤード(Flowers Vineyard)
 → オーガニック農法を駆使し、ピュアな果実味を活かしたスタイルを追求

カリフォルニアのシュナン・ブランは、伝統を守る造り手と、新たな挑戦を続けるワイナリーが共存する、進化し続けるワイン です。

フレッシュでカジュアルに楽しめるものから、長期熟成向けのリッチなタイプまで、幅広いスタイルがあるのが魅力。産地や造り手によって個性が大きく異なるので、いろいろ飲み比べてみると面白い発見があるはずです。

その他の産地

シュナン・ブランといえばロワール地方、南アフリカ、カリフォルニアが主要産地として知られていますが、実は アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド でも個性的なシュナン・ブランが造られています。それぞれの国が持つ気候や土壌の違いが、ユニークなスタイルを生み出しているのです。


アルゼンチン

アルゼンチンといえばマルベックのイメージが強いですが、実は白ワインも注目を集めています。特にアンデス山脈の麓 に広がるワイン産地では、シュナン・ブランがひそかに生産されています。

主な産地

メンドーサ(Mendoza)
もっともシュナン・ブランの生産量が多い地域。標高の高い畑では昼夜の寒暖差が大きく、フレッシュな酸が保たれるため、爽やかで飲みやすいスタイルのワインが生まれる。

サン・フアン(San Juan)
やや温暖な気候のため、熟した果実味と丸みのある口当たりが特徴的。果実の甘みが心地よい、リッチなタイプのシュナン・ブランが造られる。

アルゼンチンのシュナン・ブランの特徴

・柑橘系の果実味(レモン、グレープフルーツ)とトロピカルフルーツ(パイナップル、マンゴー)のバランスが良い
・ステンレスタンクで造られるフレッシュなタイプが多いが、オーク樽を使ったリッチなスタイルも増えてきている
・料理との相性がよく、特に セビーチェ(魚介のマリネ) とのペアリングが人気

注目の生産者

ボデガ・カタナ・サパータ(Bodega Catena Zapata)
伝統的なワイン造りを大切にしながら、新しい技術も取り入れる名門。シュナン・ブランは限られた畑で少量生産。

エル・エステコ(El Esteco)
標高の高い地域で栽培されたシュナン・ブランを使用し、クリーンでピュアなワインを造る。


オーストラリア

オーストラリアでは、かつてシュナン・ブランが主に大量生産用のブドウとして扱われていました。しかし近年、個性的なワインを造る生産者が増え、特に 西オーストラリア州や南オーストラリア州 で高品質なシュナン・ブランが登場しています。

主な産地

スワン・ヴァレー(Swan Valley, Western Australia)
オーストラリアで最も古いワイン産地のひとつ。温暖な気候のため、熟した果実味が前面に出るシュナン・ブランが多い。

バロッサ・ヴァレー(Barossa Valley, South Australia)
シラーズで有名な産地だが、近年は古木のシュナン・ブランに注目が集まっている。樽熟成によるリッチでクリーミーなスタイルが人気。

オーストラリアのシュナン・ブランの特徴

・パイナップルやパッションフルーツのような南国系の果実味
・酸が穏やかで、ボリューム感のあるスタイルが多い
・オレンジワイン(スキンコンタクト)の実験的な造りも増えている

注目の生産者

ヴァス・フェリックス(Vasse Felix)(マーガレット・リヴァー)
ナチュラルなアプローチで造られたシュナン・ブランが人気。

ヤルンバ(Yalumba)(バロッサ・ヴァレー)
樽発酵とシュール・リー製法を駆使し、複雑味のあるシュナン・ブランを造る。


ニュージーランド

ニュージーランドは、ソーヴィニヨン・ブランのイメージが強いですが、一部のワイナリーでは シュナン・ブランの個性を生かしたワイン造り も行われています。特に 北島のギズボーン(Gisborne)やホークス・ベイ(Hawke’s Bay) で興味深いシュナン・ブランが生まれています。

主な産地

ギズボーン(Gisborne)
ニュージーランドの中でも温暖な地域で、熟した果実味とクリーミーな質感が特徴。

ホークス・ベイ(Hawke’s Bay)
石灰質土壌の影響で、ミネラル感のあるスタイリッシュなシュナン・ブランが造られる。

ニュージーランドのシュナン・ブランの特徴

・柑橘や青リンゴのような爽やかな香り
・クリーンでピュアな果実味、フレッシュな酸
・ステンレスタンクでの発酵が多く、フードフレンドリーなワインが多い

注目の生産者

ミルトン・ヴィンヤーズ(Millton Vineyards)(ギズボーン)
ニュージーランドで最初にビオディナミを導入したワイナリー。ピュアな味わいのシュナン・ブランを生産。

クラギー・レンジ(Craggy Range)(ホークス・ベイ)
上品でエレガントなシュナン・ブランを造ることで知られる。

アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランドでは、それぞれの気候や造り手のアプローチによって ロワールや南アフリカとは違った個性 を持つシュナン・ブランが生まれています。
特にオーストラリアでは ナチュラルワインやオレンジワイン、ニュージーランドでは フレッシュで洗練されたスタイル が特徴的です。

§2. シュナン・ブランの栽培特性と課題

シュナン・ブランは、その 適応力の高さ によって、世界中のさまざまな地域で栽培されているブドウ品種です。冷涼な気候から温暖な気候まで幅広い環境に適応できる一方で、栽培の難しさや収量管理の課題も多くあります。この章では、シュナン・ブランの栽培特性と、それに伴う課題を掘り下げていきます。


栽培環境への適応力(冷涼・温暖気候での違い)

シュナン・ブランは 環境適応力が非常に高い品種 で、冷涼なロワール地方から温暖な南アフリカまで、多様な地域で生育可能です。そのため、気候条件によってワインのスタイルが大きく変化 するのが特徴です。

冷涼な気候(フランス・ロワール地方、ニュージーランド)

特徴:

・酸が際立ち、フレッシュで引き締まった味わいになる
・柑橘系(レモン、グレープフルーツ)や青リンゴ、白い花の香りが特徴的
・ミネラル感が強く、長期熟成ポテンシャルが高い

代表的なスタイル:

辛口のシュナン・ブラン(ヴーヴレ、サヴニエール)
スパークリングワイン(ロワール地方)
貴腐ワイン(カール・ド・ショーム、ボンヌゾー)

温暖な気候(南アフリカ、オーストラリア、カリフォルニア)

特徴:

・より熟した果実味(パイナップル、マンゴー、洋ナシ)が前面に出る
・酸は穏やかになり、ボリューム感が増す
・樽熟成によるナッツやハチミツのような風味が際立つ

代表的なスタイル:

果実味豊かなフルボディの辛口(南アフリカ、カリフォルニア)
・オレンジワインやナチュラルワイン(オーストラリア)
・ペティヤン・ナチュレル(自然派スパークリング)(南アフリカ)


主要な課題(病害、収量管理、成熟度のバランス)

シュナン・ブランは栽培しやすい一方で、収量の管理や病害に対する対策が求められる品種でもあります。適切に管理しなければ、ワインの品質に大きく影響を及ぼします。

1. 収量管理の難しさ

シュナン・ブランは 非常に多産な品種 であり、適切な剪定を行わないと 過剰な収量 になりやすい特徴があります。収量が多すぎると、酸が薄まり、味わいに締まりのないワインになってしまいます。

解決策:

  • 摘房(グリーンハーベスト) を実施し、ブドウの房の数を減らすことで、より凝縮した味わいを生み出す
  • 樹齢の高いブドウ(オールド・ヴァイン)を使用 し、自然な収量制限を活かす(特に南アフリカのスワートランドなど)

2. 病害への脆弱性

シュナン・ブランは 灰色カビ病(ボトリティス・シネレア) に対して感受性が高く、湿度の高い地域では特に注意が必要です。これは貴腐ワイン造りにとっては有利に働くこともありますが、望まない場合は厄介な問題になります。

解決策:

・風通しの良い 仕立て方(垣根仕立てなど) を採用し、湿気を逃がす
適切な防除 を行い、過度な貴腐菌の繁殖を防ぐ
標高の高い地域での栽培(南アフリカ、アルゼンチンのアンデス山麓)で病害リスクを低減

3. 成熟度のバランスの取り方

シュナン・ブランは 成熟スピードが環境によって異なる 品種で、冷涼地域では熟すのに時間がかかり、温暖地域では急速に熟す傾向があります。そのため、 収穫のタイミング がワインのスタイルを決定する大きな要因となります。

収穫時期による違い:

・早めの収穫 → フレッシュで酸が際立つワイン(スパークリング向け)
・適熟での収穫 → バランスの取れた果実味と酸のワイン(辛口向け)
・遅摘み → 甘口ワイン向け(貴腐ワイン、遅摘みワイン)

解決策:

複数回の収穫(トライ・パス) を行い、異なる成熟度のブドウを使い分ける(ロワール地方の貴腐ワイン生産者がよく行う手法)
ブレンドの工夫(南アフリカでは、異なる熟度のシュナン・ブランをブレンドして複雑な味わいを出す)


世界各地での栽培スタイルの違い

シュナン・ブランは地域ごとに異なる 栽培アプローチ が取られています。

産地栽培方法収穫タイミング
フランス(ロワール)灰色カビ病対策のための開放的な仕立て遅摘み(貴腐ワイン)、適熟(辛口)
南アフリカ乾燥地帯でのオールド・ヴァイン活用早め(フレッシュな酸)、適熟(果実味)
カリフォルニア低収量に管理し、オーク樽発酵適熟(樽熟成向け)
オーストラリアオーガニック・ナチュラルワイン製法適熟(ナチュラルワイン)、遅摘み(オレンジワイン)

シュナン・ブランは 世界各地で多様なスタイルを生み出す品種 ですが、それぞれの産地で適した栽培技術が求められます。

§3. シュナン・ブランの醸造スタイル

シュナン・ブランは、醸造のアプローチによって驚くほど多様なスタイルを生み出します。フレッシュで爽やかな辛口から、オーク樽を使用したリッチなタイプ、さらにはスパークリングや貴腐ワインまで幅広く対応できるのが、この品種の魅力です。この章では、シュナン・ブランの醸造スタイルについて詳しく見ていきましょう。


発酵容器とスタイルの違い

ワインの味わいは、発酵に使用する容器によって大きく変化します。シュナン・ブランは ステンレスタンク、オーク樽、コンクリートタンク、アンフォラ など、さまざまな発酵容器が使われています。

1. ステンレスタンク発酵

特徴:

・クリアでフレッシュな果実味を最大限に引き出す
・酸を活かしたピュアなスタイル
・特に スパークリングワインロワール地方の辛口 でよく使われる

代表的な産地:

ヴーヴレ(ロワール地方) – シャープでフレッシュなスタイル
・クラークスバーグ(カリフォルニア) – 爽やかで飲みやすい日常向けワイン


2. オーク樽発酵・熟成

特徴:

・樽のニュアンス(バニラ、ナッツ、ハチミツ)が加わり、リッチな味わい
・口当たりがなめらかになり、熟成ポテンシャルが高まる
・特に 南アフリカ、カリフォルニア、オーストラリアのシュナン・ブラン で見られる

代表的な産地:

サヴニエール(ロワール地方) – 骨格のある辛口
ステレンボッシュ(南アフリカ) – クリーミーでボリューム感のあるスタイル
ナパ・ヴァレー(カリフォルニア) – 樽発酵のコクのある白ワイン


3. コンクリートタンクやアンフォラの活用

特徴:

・樽の風味を加えず、果実味をそのまま生かせる
・口当たりがやわらかくなり、ミネラル感が際立つ
ナチュラルワインの造り手が好んで使用

代表的な産地:

スワートランド(南アフリカ) – 自然派の造り手が多く採用
・オーストラリア – アンフォラを活用した実験的なワインが増加


発酵・熟成による味わいの変化

シュール・リー製法(Sur Lie)

特徴:

・発酵後に澱(おり)とともに熟成させることで、コクと旨味が増す
・酸とのバランスがよくなり、リッチな口当たりになる
・特に ヴーヴレの辛口や南アフリカの高品質ワイン で採用される

代表的な産地:

ヴーヴレ(フランス) – エレガントな質感
南アフリカ – 熟成による奥行きのあるワイン


マロラクティック発酵(MLF)の有無

特徴:

・MLFを行うと 酸がやわらぎ、クリーミーな口当たり になる
・フレッシュなスタイルでは MLFを行わない ことが多い
・樽熟成タイプでは MLFを採用し、より豊かなボディを持つワインに

代表的な産地:

南アフリカ(MLFを活用したボリューム感のあるシュナン・ブラン)
ナパ・ヴァレー(バターのような滑らかな口当たりのワイン)


特殊な醸造技術(貴腐ワイン、遅摘み、ペティヤン・ナチュレル)

1. 貴腐ワイン(Botrytized Chenin Blanc)

特徴:

・貴腐菌の影響で水分が蒸発し、糖度が凝縮される
・蜂蜜やアプリコット、キャラメルのような濃厚な甘みが特徴
・数十年の熟成が可能

代表的な産地:

カール・ド・ショーム(フランス) – エレガントな貴腐ワイン
ボンヌゾー(フランス) – 凝縮した甘みと酸のバランスが絶妙


2. 遅摘み(Late Harvest)

特徴:

・通常の収穫時期より遅くまでブドウを木に残し、より糖度を高める
・甘口から極甘口までさまざまなスタイルが造られる
・貴腐ワインとは異なり、貴腐菌の影響を受けない場合もある

代表的な産地:

ロワール地方(フランス) – 遅摘みのモワルー(Moelleux)スタイル
南アフリカ – リッチなデザートワインとして生産


3. ペティヤン・ナチュレル(Pétillant Naturel)

特徴:

・瓶内二次発酵ではなく、一次発酵途中のワインを瓶詰めして発泡を生じさせる
・酸化防止剤(SO2)の使用を極力抑えたナチュラルな造り
・爽やかで軽快な泡立ち

代表的な産地:

ロワール地方(フランス) – 伝統的なペティヤン・ナチュレル
・南アフリカ – 自然派ワインの造り手による発展が進む

§4. まとめ

シュナン・ブランは、その適応力の高さと造り手の工夫によって 世界各地で異なる個性を持つワイン に仕上がる品種です。フレッシュで爽快な辛口から、熟成向きのリッチなタイプ、さらにはスパークリングや貴腐ワインまで、幅広いスタイルを楽しむことができます。


シュナン・ブランの魅力を振り返る

1. 世界の主要産地とその特徴

シュナン・ブランの個性は、産地ごとの気候や土壌、造り手のアプローチによって大きく異なります。

ロワール地方(フランス):伝統的なシュナン・ブランの本場。ミネラル感のある辛口から貴腐ワインまで多様なスタイルが揃う。

南アフリカ:世界最大のシュナン・ブラン生産国。フレッシュなスタイルからリッチな樽熟成タイプまで幅広く、近年は自然派ワインも増加。

カリフォルニア(アメリカ):シャルドネの影に隠れていたが、近年シュナン・ブランの価値が再評価され、オールド・ヴァインを活かした高品質なワインが登場。

アルゼンチン・オーストラリア・ニュージーランド:新たな試みが増え、ナチュラルワインやオレンジワインなど、自由な発想のシュナン・ブランが生まれている。


2. 栽培のポイントと課題

シュナン・ブランは 適応力が高い反面、栽培管理が重要 となる品種です。

冷涼気候ではフレッシュな酸が際立つが、成熟に時間がかかる

温暖気候では果実味が豊かになり、酸が落ちすぎないよう収穫タイミングが重要

収量が多くなりやすいため、適切な剪定と収穫管理が必要

灰色カビ病のリスクがあるため、風通しの良い仕立て方が求められる


3. 醸造スタイルの多様性

シュナン・ブランは 醸造の工夫次第で多様な味わいを表現できる品種 です。

醸造方法特徴代表的な産地
ステンレスタンク発酵フレッシュでピュアな果実味ヴーヴレ(フランス)、クラークスバーグ(カリフォルニア)
オーク樽発酵・熟成コクと複雑味、リッチな風味サヴニエール(フランス)、ステレンボッシュ(南アフリカ)
コンクリートタンク・アンフォラ果実味を生かし、ナチュラルな仕上がりスワートランド(南アフリカ)、オーストラリア
シュール・リー製法旨味とリッチなテクスチャーヴーヴレ(フランス)、南アフリカ
貴腐ワイン・遅摘み蜂蜜のような甘みと濃厚な風味カール・ド・ショーム(フランス)、南アフリカ
ペティヤン・ナチュレル自然派スパークリング、爽やかな泡立ちロワール地方、南アフリカ

シュナン・ブランは、その多様性とポテンシャルの高さから、ワイン好きにとって 発見の多い品種 です。ロワール地方の伝統を楽しむもよし、南アフリカやカリフォルニアの新しいスタイルを試すもよし。ぜひ、自分の好みに合うシュナン・ブランを見つけて、その魅力を存分に味わってみてください!

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