[2024年最新]ソムメモ【第17回 ドイツ】ソムリエ完全解説
はじめに
ドイツは、世界的に有名なリースリングをはじめとする高品質なワインを産出する国として知られています。13の主要なワイン産地があり、それぞれ独自の風土と伝統を持っています。気候変動の影響もあり、近年では赤ワインの生産も盛んになり、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)などが注目を集めています。
今回は、ドイツのワイン産業の概略、主要ブドウ品種、ワイン法と品質分類、各産地の特徴について詳しく解説します。ドイツワインの歴史や気候風土を理解し、各産地の特性や主要ブドウ品種を学ぶことで、ドイツワインへの理解が深まり、より一層楽しめるようになるでしょう。
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目次
1.概略
1-1.プロフィール
1-2.歴史
1-3.気候風土
3.ワイン法と品質分類
3-1.ワイン法概略
3-2.スパークリングワイン
3-3.ロゼワイン
3-4.ブドウ畑の格付け
3-5.新ドイツワイン法
4.産地と特徴
4-1.アール Ahr
4-2.モーゼル Mosel
4-3.ミッテルライン Mittelrhein
4-4.ラインガウ Rheingau
4-5.ナーエ Nahe
4-6.ラインヘッセンRheinhessen
4-7.ファルツPfalz
4-8.ヘシッシェ ベルクシュトラーセ Hessische Bergstraβe
4-9.フランケン Franken
4-10.ヴュルテンベルク Württemberg
4-11.バーデン Baden
4-12.ザーレ ウンストルート Saale-Unstrut
4-13.ザクセン Sachsen
1.概略
1-1.プロフィール
ドイツの栽培地は北緯47~52度の範囲内にあり、年間ワイン生産量は約894万ヘクトリットル、ブドウ栽培面積は約10万ヘクタールです。ドイツには13のワイン生産地域があり、アール、モーゼル、ミッテルライン、ラインガウ、ナーエ、ラインヘッセン、ファルツ、ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ、フランケン、ヴュルテンベルク、バーデン、ザーレ・ウンストルート、ザクセンといった地域が含まれます。これらの地域は、気候や土壌の違いにより、多様なワインを生産しています。
ドイツのワイン産業は、特にライン川とその支流であるモーゼル川沿いで生産されるリースリングで有名です。リースリングはその高い品質と豊かな風味で世界中で高く評価されており、近年では気候変動の影響により、他の品種も高品質なワインが生産されています。特にバーデン、ファルツ、アール渓谷などで優れたシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が生産されています。また、ドイツには世界有数のブドウ栽培と醸造の教育研究機関であるガイゼンハイム大学があり、その存在はドイツのワイン産業の発展に大きく寄与しています。
1-2.歴史
ドイツワインの歴史は紀元前5~4世紀に遡り、ライン川やモーゼル川周辺のケルト族貴族が地中海産のワインを輸入していたことがエトルリア様式のアンフォラの出土から明らかになっています。800年に西ローマ皇帝の称号を得たカール大帝は、所領に勅令を出し、適切なブドウ栽培と衛生的な醸造を指示するとともに、教会や修道院にブドウ畑を寄進してワイン造りの普及に貢献しました。
1136年にはシトー派のエーバーバッハ修道院がラインガウに設立され、1720年にはラインガウのヨハニスベルク修道院にリースリングの苗木が大量に植樹されました。エーバーバッハ修道院が所有するシュタインベルクでは1753年と1760年に貴腐ブドウの収穫が行われ、ヨハニスベルクでは1775年から貴腐ワインの醸造が毎年試みられるようになりました。
ドイツのワイン産業はローマ時代にモーゼル川沿いに最初のブドウ畑が設立されたことに始まり、中世にはシトー派やベネディクト派の修道院がワイン造りの発展に大きく寄与しました。シュロス・ヨハニスベルクとクロスター・エーバーバッハなどの有名なラインガウのワイナリーは、修道院として設立され、約900年にわたってワインを生産しています。リースリングは1435年にラインガウで初めて記録され、その後モーゼルにも広まりました。1720年にはシュロス・ヨハニスベルクがリースリング専用の大規模なブドウ畑を初めて設立しました。
20世紀には質の低下によりドイツワインの評価は低迷しましたが、20世紀後半からは品質向上の努力が続けられ、現在ではVDP協会のメンバーが高品質なワイン生産に注力しています。
1-3.気候風土
ドイツの気候は冷涼で、ブドウの成長期には多くの雨が降ります。年間平均降水量は500~1,000mmで、地域によって異なります。雨が多いため、水はけの良い土壌が高品質なワイン生産にとって重要です。高品質なワインを生産するためには、日照効率の高い斜面が有利であり、川沿いにブドウ畑が多い理由は、川の豊かな水量による保温効果もあります。年間日照時間は1,400~1,800時間と比較的短いですが、近年の気候変動により、1989年以降ほぼ毎年ブドウが熟すようになっています。
ドイツのワイン産地は特にライン川とその支流であるモーゼル川沿いに集中しており、ここで生産されるリースリングは世界的に評価されています。気候変動の影響により、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)など他の品種も高品質なワインが生産されるようになっています。
ドイツのビールとその他の製品についても触れておきます。ドイツはビール文化が非常に発達しており、約1,300の醸造所と5,000のブランドが存在します。特にバイエルン州には多くの醸造所が集中しています。ドイツのビール純粋令(Reinheitsgebot)は世界中のビール生産の基準となっており、水、ホップ、モルトのみを使用することが求められています。また、ドイツは多様なスピリッツも生産しており、シュナップスやイェーガーマイスターが有名です。
2.主要ブドウ品種
ドイツのブドウ栽培面積の約66%は白ブドウが占めており、その中でもリースリングが最も多く栽培されています。黒ブドウではシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)がトップです。以下に、栽培面積上位の主要ブドウ品種を紹介します。
栽培面積上位5品種
白ブドウ
一位:リースリング(Riesling = Rheinriesling)
ドイツで最も栽培面積が広く、高品質なワインを生産します。
二位:ミュラー・トゥルガウ(Müller-Thurgau = Rivaner)
リースリングに次ぐ栽培面積を誇り、フルーティなワインを生産します。
三位:グラウブルグンダー(Grauburgunder = Ruländer = Pinot Gris)
世界的に有名な品種で、ドイツでも重要な白ブドウの一つです。
四位:ヴァイスブルグンダー(Weiβburgunder = Pinot Blanc)
フルーティでエレガントなワインを生産し、世界で最も多く栽培されています。
五位:ジルヴァーナー(Silvaner)
フランケン地方で主要な品種であり、遅霜に強い特性があります。
黒ブドウ
一位:シュペートブルグンダー(Spätburgunder = Pinot Noir)
高品質な赤ワインを生産し、近年の気候変動によりその栽培面積は増加しています。
二位:ドルンフェルダー(Dornfelder)
栽培面積が急増している品種で、フルボディの赤ワインを生産します。
三位:ポルトギーザー(Portugieser)
フルーティで軽い赤ワインを生産しますが、栽培面積は減少傾向にあります。
四位:トロリンガー(Trollinger = Vernatsch = Schiava)
主にヴュルテンベルク地方で栽培されている食用にも適した品種です。
五位:レンベルガー(Lemberger = Blaufränkisch)
フルボディの赤ワインを生産し、栽培面積が増加しています。
その他の重要な品種
シュヴァルツリースリング(Schwarzriesling = Müllerrebe = Pinot Meunier)
主にスパークリングワインの生産に使用されます。
ピウィ品種(PIWI)
有機農法に取り組む生産者が増加し、カビ菌耐性品種が注目されています。代表的な品種にはカベルネ・ブラン、ソラリス、ソーヴィニエ・グリ、ヨハニター、ムスカリス、レゲント、カベルネ・コルティスなどがあります。
ブドウの交配
白ブドウ
ミュラー・トゥルガウ(Müller-Thurgau)
リースリングとマドレーヌ・ロワイヤルの交配種。
バッカス(Bacchus)
(シルヴァーナー × リースリング)とミュラー・トゥルガウの交配種。
シャイレーベ(Scheurebe)
リースリングとブケットトラウベの交配種。
オルテガ(Ortega)
ミュラー・トゥルガウとジーガーレーベの交配種。
フクセルレーベ(Huxelrebe)
エルブリングとクルティリエ・ムスケの交配種。
黒ブドウ
ドルンフェルダー(Dornfelder)
ヘルフェンシュタイナーとヘロルドレーベの交配種。
ドミナ(Domina)
ポルトギーザーとシュペートブルグンダーの交配種。
レゲント(Regent)
(シルヴァーナー × ミュラー・トゥルガウ)とシャンボールサンの交配種。
カベルネ・ミトス(Cabernet Mitos)
レンベルガーとテイントゥリエ・デュ・シェールの交配種。
カベルネ・ドルサ(Cabernet Dorsa)
レンベルガーとドルンフェルダーの交配種。
ドイツのワイン産地は非常に多様で、それぞれの地域で異なるブドウ品種が栽培されています。北西部の粘板岩の多い地域ではリースリングが、南部の三畳紀が分布する地域ではグラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー、シュペートブルグンダーが多く、東部のフランケンでは遅霜に強いジルヴァーナーが主要品種となっています。
3.ワイン法と品質分類
3-1.ワイン法概略
ドイツのワイン法は、品質と原産地を明確にするために厳格な規制を設けています。これにより、消費者はラベルを見てワインの品質やスタイルを容易に判断できるようになっています。
歴史とワイン法の成立
1871年にドイツが最初に統一され、1892年に最初のワイン法が成立しました。1971年には大幅に改正され、収穫時の果汁糖度に応じた格付けシステムが導入されました。これにより、ドイツワインの品質が数値化され、明確な基準が設けられました。
ドイツワイン産地の区画
ドイツのワイン産地は以下の区画に分類されます:
特定生産地域(Bestimmtes Anbaugebiet): 13
地区(Bereiche): 42
集合畑(Großlage)
単一畑(Einzellage)
EUのワイン法による品質分類
EUのワイン法に基づき、ドイツのワインは以下のカテゴリーに分類されます:
地理的表示付きワイン(g.U.)
プレディカーツヴァイン Prädikatswein
クヴァリテーツヴァインQualitätswein
地理的表示付きワイン(g.g.A.)
ランドヴァイン Landwein
地理的表示のないワイン
EUワイン、地理的表示のないドイツワイン
Landwein(ラントヴァイン)
・指定地域は26で、使用ブドウは指定地域から85%以上使用します。
・基本的に味の規格は辛口(trocken)とオフドライ(halbtrocken)です。
Qualitätswein(クヴァリテーツヴァイン)
・13の特定ワイン生産地域のいずれか1つの地域で栽培・収穫されたブドウを100%用い、その地域内で醸造されます。
・アルコール濃度は7.0%以上で、アルコール濃度を補うための補糖(シャプタリゼーション)が許されます。
・ワインは公的機関による品質検査を受け、公的検査番号(A.P.Nr.)をラベルに表示します。ラベルに書かれた数字の下2桁は検査年を指します。
Prädikatswein(プレディカーツヴァイン)
・補糖は認められていません。
・収穫時のブドウの状態と果汁糖度及びワインのスタイルにより、6つの肩書が存在します。
アルコール濃度 | 肩書名称 | エクスレ度 (Oechsle) | ブドウの状態・期待されるワインのスタイル |
---|---|---|---|
7.0% | Kabinett | 70~85 | 繊細で軽いスタイルのワイン |
7.0% | Spätlese | 80~95 | 完熟したブドウを用い、カビネットよりも香り高く味わいに深みのあるスタイル |
7.0% | Auslese | 88~105 | 完熟か貴腐ブドウを用い、香り高く複雑で深みがあり、貴腐独特の香味もあること |
5.5% | Beerenauslese | 110~128 | 過熟か貴腐ブドウを用い、香り高く濃厚で複雑なスタイル |
5.5% | Eiswein | 110~128 | 樹上で-7℃以下で凍結したブドウを搾汁し醸造し、糖分とともに酸度も高い、濃厚な甘口であること |
5.5% | Trockenbeerenauslese | 150~154 | 貴腐ブドウを用い、濃厚かつ複雑で高貴な甘口であること |
残糖値とスタイル
EUの規定に基づき、ドイツワインのラベルには以下の残糖値に応じた表記がある場合があります:
trocken トロッケン:
残糖値 4g/ℓ 以下もしくは 9g/ℓ 以下で、総酸度が残糖値を 2g/ℓ 以上下回らないこと
halbtrocken ハルブトロッケン:
12g/ℓ 以下か、18g/ℓ 以下で、総酸度が残糖値を10g/ℓ 以上下回らないこと
lieblich リーブリッヒ:
残糖値 45g/ℓ 以下
süß ズューズ:
残糖値 45g/ℓ 以上
feinherb ファインヘルブ:
法的な数値基準はないオフドライ
Oechsle(エクスレ)
エクスレ度は比重計による果汁の糖度測定法で、ドイツ人技師フェルディナンド・エクスレが1830年代に提唱しました。
Süßreserve(ズースレゼルヴェ)
発酵後に添加される未発酵のブドウ果汁で、甘味を補ったり酸度とのバランスを取るために使用されます。添加量の上限は総量の25%です。
3-2.スパークリングワイン
Perlwein (ペルルヴァイン)
・弱発泡性ワインで20℃で1~2.5気圧のもの。最低アルコール濃度は7%。
・炭酸は一次発酵に由来する場合と、スティル・ワインに添加したものがある。
Schaumwein (シャウムヴァイン) / Sekt (ゼクト)
Schaumwein:
・炭酸の気圧は20℃で3.0bar以上、アルコール濃度9.5%以上。
・白、赤、生産国、生産年など異なるワインをブレンドしたベースワインを使用できる。
Sekt / Qualitätsschaumwein
・炭酸の気圧は20℃で3.5bar以上、アルコール濃度10%以上で、ベースワインの基準はSchaumweinと同じ。
Deutscher Sekt
・ドイツ国内産のベースワイン(ラントヴァインの基準をクリアしたもの)から生産。
Sekt b.A. / Qualitätschaumwein b.A.
・特定生産地域のクヴァリテーツヴァインから生産されるカテゴリーで、以下の2つが含まれる。
①Winzersekt
・生産者がブドウを自家栽培し、自家醸造したベースワインを使用。伝統的瓶内二次発酵で醸造期間は一次発酵を含み9カ月以上。
②Crémant
・手摘み、全房圧搾、150kgの収穫から得る果汁を100リットル以下に抑えた高品質なSekt b.A.。伝統的瓶内二次発酵で醸造期間は一次発酵を含み9カ月以上。
Pét Nat (ペットナット)
・2015年産からドイツ(特にファルツ、ラインヘッセン、フランケン)の若手ビオワイン生産者が醸造。
・一次発酵の途中で瓶詰めして炭酸をワインに溶け込ませるメトード・アンセストラルと同様の製法。
・Pétillant Naturelの略で、炭酸の気圧が3.0barを超えるものはSchaumweinに分類される。
3-3.ロゼワイン
Weiβherbst (ヴァイスヘルプスト)
・単一の赤ワイン用品種から醸造されたQualitätsweinもしくはPrädikatsweinのロゼワイン。
Blanc de Noirs (ブラン・ド・ノワール)
・赤ワイン用ブドウを白ワインと同様に圧搾して醸造し、典型的な明るい色調を示しているワイン。
Rotling (ロートリング)
赤ワインと白ワイン用ブドウ、もしくはそれぞれ破砕して果汁に漬けた状態で混ぜ、一緒に圧搾・醸造した淡い赤色もしくは明るい赤色のロゼワイン。生産地域により独特の名称がある。
Schillerwein
ヴュルテンベルク産。
Badisch-Rotgold
バーデン産、グラウブルグンダーとシュペートブルグンダーからの醸造。
Schieler
ザクセン産で伝統的には混植・混醸のワインを意味する。
3-4.ブドウ畑の格付け
VDP.Die Prädikatsweingüter(プレディカーツヴァイン醸造所連盟)
VDPは、ドイツワインの品質向上を目指す生産者団体であり、独自の格付けシステムを持っています。2012年に導入された4段階の格付けシステムは、ドイツワイン法に基づく畑名区分とは異なり、VDP独自の区分となっています。以下がその格付けシステムです。
VDP. Groβe Lage グロース ラーゲ(グランクリュ)
特級区画とされる畑で、最上級の品質を誇るワインが生産されます。グランクリュの称号は、厳選された畑でのみ使用されます。
VDP. Erste Lage エアステ ラーゲ(プルミエクリュ)
1級区画とされる畑で、非常に高品質なワインが生産されます。プルミエクリュの称号もまた、優れた畑に限定されます。
VDP. Ortswein オルツヴァイン(村名入りワイン)
村名入りワインは、特定の村や地域名がラベルに記載され、地域の特性を反映したワインが生産されます。
VDP. Gutswein グーツヴァイン(醸造所名入りワイン)
醸造所名入りワインは、特定の醸造所で生産され、その醸造所のスタイルや品質を示すワインです。
この格付けシステムにより、VDPはドイツワインの品質を保証し、高品質なワインの生産を促進しています。
3-5.新ドイツワイン法
格付け基準の変更
新しいドイツワイン法では、従来の「収穫時の果汁糖度」に基づく格付け基準から、「地理的呼称範囲」に基づく格付け基準へと変更されました。これにより、ワインの品質評価がより地域特性に即したものとなります。
g.g.A.のLandweinの規制撤廃
g.g.A.のLandweinに関しては、現行のワイン規則の一部例外を除いて、trocken(辛口)または halbtrocken(オフドライ)のみという制限が撤廃されました。これにより、生産者はより多様なスタイルのLandweinを生産することが可能になります。
g.U.:Qualitätswein(クヴァリテーツヴァイン)
地理的呼称範囲に基づく格付けは以下の通りです(生産条件は現行のQualitätsweinと同じです):
格付け区分 | 読み方 | 詳細 |
---|---|---|
Einzellage(単一畑ワイン) | アインツェルラーゲ | 収穫時の果汁糖度は現在のKabinettの基準を満たしていることが必要。販売は収穫翌年の3月1日以降。使用品種は、各生産地域の保護委員会(Schutzgemeinschaft)が認めたものでなければならない。 |
Groβes Gewächs(グラン・クリュ 辛口) | グローセス・ゲヴェックス | 白もしくは赤のQualitätsweinで、単一品種を用いて、trockenの基準を満たし、ラベルには生産年を記載する。醸造に使う果汁は、潜在アルコール濃度が12.0%以上であること。販売は白は収穫翌年の9月1日以降、赤は翌々年の6月1日以降。 |
Erstes Gewächs(プルミエ・クリュ 辛口) | エアステス・ゲヴェックス | 白もしくは赤のQualitätsweinで、単一品種を用いて、trockenの基準を満たし、ラベルには生産年を記載する。醸造に使う果汁は、潜在アルコール濃度が11.0%以上であること。販売は収穫翌年の3月1日以降。 |
Gemeinde、Ortsteil(市町村名・区域名ワイン) | ゲマインデ、オルトシュタイル | 収穫時の果汁糖度は現在のKabinettの基準を満たしていることが必要。販売は収穫翌年の12月15日以降。 |
Region(ベライヒ・集合畑ワイン) | レギオン | BereicheやGroβlageを名乗る場合は、それぞれの産地名と同じ書体・色・大きさで「Region」も表記する。 |
Anbaugebiet(生産地域名呼称ワイン) | アンバウゲビート | 現行の13のワイン生産地域のいずれかで栽培・醸造されたワイン。 |
これにより、新しいドイツワイン法は、ワインの品質評価と生産方法を地域特性に合わせたものにし、生産者と消費者の双方にとってより理解しやすく、信頼性の高いものとなります。
4.産地と特徴
栽培面積上位5地域
ドイツの主要なワイン生産地域のうち、栽培面積が広い上位5地域は、ラインヘッセン、ファルツ、バーデン、ヴュルテンベルク、モーゼルです。これらの地域は、それぞれ異なる特徴と気候を持ち、多様なワインが生産されています。
4-1.アール Ahr
Bereich:1、Großlage:1、Einzellage:40
アールは、ドイツ西部における最北のブドウ栽培地域で、かつて西ドイツの首都だったボンに近いアール川沿いに位置しています。赤ワイン用ブドウの栽培比率が約80%であり、その中でもシュペートブルグンダーが約64%を占めています。
4-2.モーゼル Mosel
Bereich:6、Großlage:18、Einzellage:524
モーゼル川の水源はアルザスのヴォージュ山脈にあり、フランスのロレーヌ地方を過ぎるとルクセンブルクとドイツの国境となり、コブレンツでライン川に合流します。川の流れに沿ってさまざまに向きを変える渓谷の斜面の約4割が斜度30%を超える急斜面の畑(Steillage)で、下流の一部は急斜面に石垣でテラス状にブドウ畑が仕立てられていることから Terassenmosel と称することがあります。白ワイン用品種が全体の約91%を占め、主要品種のリースリングが約60%を占めます。ブドウ畑はオーバーモーゼル(上流)、ミッテルモーゼル(中流)、ウンターモーゼル(下流)と支流のザールとルーヴァーに分かれます。
4-3.ミッテルライン Mittelrhein
Bereich:2、Großlage:10、Einzellage:111
ビンゲンとボンの間の約110kmにわたるライン川流域のドイツで2番目に小さい産地で、ビンゲンからコブレンツまでの景観はユネスコ世界文化遺産に登録されています。2019年に22の生産者が「Mittelrhein Riesling Charta」 を結成し、オーストリアのヴィネア・ヴァッハウに倣い「Handstreich」、「Felsenspiel」、「Meisterstück」の3段階の格付けを設定し、ミッテルライン産リースリングの個性のアピールに努めています。
4-4.ラインガウ Rheingau
Bereich:1、Großlage:11、Einzellage:129
北緯50度に沿って広がるブドウ畑の約77%をリースリングが、約12%をシュペートブルグンダーが占めています。1136年にシトー派のエーバーバッハ修道院が設立され、彼らがシュペートブルグンダーをラインガウに持ち込んだと考えられています。1971年のドイツワイン法により、一定の果汁糖度を満たしたワインを指す用語のKabinettは、それ以前は特別に優れたワインを貯蔵する部屋(Cabinet)を指し、1712年にエーバーバッハ修道院が用いたのが最初とされています。1867年にはドイツ初のブドウ畑を三段階に格付けした地図が刊行されました。ガイゼンハイム大学があり、卒業生同士で若手醸造家団体を結成するなど、近年のドイツワインの新たなムーブメントを築いています。
4-5.ナーエ Nahe
Bereich:1、Großlage:6、Einzellage:310
ナーエはラインヘッセンとミッテルラインに挟まれた地域で、ナーエ川河口から南西に向けて扇を半ば開いたような形をしています。
4-6.ラインヘッセンRheinhessen
Bereich:3、Großlage:23、Einzellage:414
ラインヘッセンはドイツ最大のワイン生産地域で、「千の丘のある地方」と呼ばれています。白ワイン用品種が全体の約74%を占め、主要品種はリースリング(19.4%)、ミュラー・トゥルガウ(14.3%)です。ヴォルムスの聖母教会の周辺にあるブドウ畑からのワインが、リープフラウミルヒとして18世紀半ば頃から有名になり、20世紀初頭には世界的な銘酒として高値で取引されましたが、間もなく模造品が出回るようになり、1971年のドイツワイン法で特定の個性を持つ甘口白ワインとして規定されました。1980年代の輸出される約60%がリープフラウミルヒで、ドイツワインは安くて甘いという先入観が造り上げられました。
4-7.ファルツPfalz
Bereich:2、Großlage:25、Einzellage:323
ファルツはドイツで2番目に大きな生産地域で、ラインヘッセンの南に地続きで広がっています。村々のワイン祭りでは容量500mlのDubbeglasと呼ばれる壁面に凹凸の付いた独特のコップでワインかワインを炭酸水で割ったショーレが供されます。
4-8.ヘシッシェ ベルクシュトラーセ Hessische Bergstraβe
Bereich:2、Großlage:3、Einzellage:23
ヘシッシェ・ベルクシュトラーセはドイツで最も栽培面積の小さいワイン生産地域です。風光明媚で温暖な気候で知られ、「ドイツのトスカーナ」あるいは「リヴィエラ」とも称されています。近年、リースリングの祖先ではないかといわれるRoter Rieslingを、この生産地域の特産品としてアピールする動きがあります。
4-9.フランケン Franken
Bereich:3、Großlage:23、Einzellage:216
フランケンはバイエルン州に属する地域で、マイン川流域に広がります。他の産地が甘口を量産していた80年代以前も辛口にこだわり、一般的に残糖9g/l以下がtrockenですが、独自基準で4g/l以下をtrockenとし、Fränkisch trockenと称します(ドイツワイン法で認められた表記ではありません)。ずんぐりとして平板なボックスボイテルと呼ばれる伝統的なボトルもよく知られています。栽培面積の約83%を白ワイン用品種が占め、主要品種はジルヴァーナー(25.3%)、ミュラー・トゥルガウ(22.7%)です。ベライヒ・マインドライエック南部のタウバー川沿いでは一時絶滅しかけた地場品種Tauberschwarzが栽培され、近年注目されています。
4-10.ヴュルテンベルク Württemberg
Bereich:6、Großlage:17、Einzellage:210
ヴュルテンベルクはネッカー川の中流から上流と、その支流に分布し、ボーデン湖畔にも飛び地がある地域です。
4-11.バーデン Baden
Bereich:9、Großlage:16、Einzellage:306
バーデンはドイツで3番目に大きなワイン生産地域で、南北に約400kmにわたり細長く伸びています。ベライヒの数は9と最多です。赤ワイン用品種がブドウ栽培面積の約39%を占め、シュペートブルグンダーが全体の32.4%を占めます。
4-12.ザーレ ウンストルート Saale-Unstrut
Bereich:4、Großlage:4、Einzellage:45
ザーレ・ウンストルートは北緯51度付近にあるドイツ最北のワイン生産地域で、旧東ドイツに位置しています。
4-13.ザクセン Sachsen
Bereich:2、Großlage:4、Einzellage:17
ザクセンはドイツで最も東寄りのポーランドとの国境近くにあり、大半のブドウ畑はエルベ川に沿って散在しています。ザクセン州の州都ドレスデンと磁器で有名なマイセンを含みます。「ザクセンコイレ」というボーリングのピンのような形のボトルと、交配品種ゴルトリースリング(リースリング × フリューアー・マリングレ)が特産物です。
5.まとめ
ドイツのワイン産業は、世界的に有名なリースリングをはじめとする多様なブドウ品種と高品質のワインで知られています。気候変動の影響もあり、近年ではシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)などの赤ワインも注目を集めています。また、ドイツにはガイゼンハイム大学などの優れた醸造教育機関があり、若手醸造家たちが新たなムーブメントを築いています。
ドイツのワイン法は、品質評価と生産方法において厳格な基準を設けており、新ドイツワイン法では地域特性に基づいた格付けが導入されました。これにより、消費者にとってより分かりやすく、信頼性の高いワイン選びが可能となっています。
ドイツの主要ワイン産地は13あり、それぞれが独自の特徴を持っています。ラインヘッセン、ファルツ、バーデン、ヴュルテンベルク、モーゼルといった地域は特に栽培面積が広く、多様なワインが生産されています。これらの地域のワインは、伝統と革新が融合した高品質なものばかりです。
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