はじめに

イタリアは長い歴史と多様な文化を誇るワインの生産地です。20の州それぞれが独自のワイン文化を持ち、バラエティ豊かなワインを生産しています。イタリア全土で栽培されているブドウ品種の数は2,000以上にも上り、その中には世界的に有名なものから、地域特有の珍しいものまで様々です。特に、品質の高いD.O.C.G.ワインが数多く存在し、イタリアワインの質の高さを物語っています。この記事では、イタリアのワイン産地について、その特徴や主要ブドウ品種、D.O.C.G.ワインについて紹介します。

目次

1.概略
　歴史
　気候風土
　主要ブドウ品種

2.ワイン法と品質分類
　特殊ワイン
　その他のアルコール飲料
　ワイン用語

3.ワイン産地とその特徴
　3-1.北部イタリア
　　ヴァッレ ダオスタ
　　ピエモンテ
　　リグーリア
　　ロンバルディア
　　トレンティーノ アルト アディジェ
　　ヴェネト
　　フリウリ ヴェネツィア ジューリア
　　エミリア ロマーニャ
　3-2.中部イタリア
　　トスカーナ
　　ウンブリア
　　マルケ
　　ラツィオ
　　アブルッツォ
　　モリーゼ
　3-3.南部イタリア
　　カンパーニア
　　プーリア
　　バジリカータ
　　カラブリア
　　シチリア
　　サルデーニャ

1.概略

イタリアは、約66万ヘクタールのブドウ栽培面積を持ち、年間ワイン生産量は約5400万ヘクトリットルに達します。ワイン造りの歴史は4000年以上にわたり、古代ギリシャ人たちは、ブドウ栽培に理想的なイタリア半島を「エノトリア・テルス」（ワインの大地）と呼びました。

歴史

イタリアでは、紀元前2000年以上前から原始的なワイン造りが行われていました。本格的なブドウ栽培を伝えたのは、紀元前8世紀からイタリア南部のシチリア、カラブリア、プーリアなどを植民地化していたギリシャ人と、ポー川以南からローマ北部に至るまでイタリア中部を広く支配していたエトルリア人です。

16世紀には、歴史家であり地理学者でもあったサンテ・ランチェリオが、ローマ教皇パウルス3世のワイン担当者として活動し、モンテプルチャーノのワインを褒める言葉を残しています。彼はソムリエの先駆けのような存在でした。さらに、16世紀末には、医者であり哲学者、作家であったアンドレア・バッチがワインの薬用効果を示した著書を出版しました。

気候風土

イタリアは北緯35度から47度に位置し、北側にはアルプス山脈が東西に延び、フランス、スイス、オーストリアとの国境を形成しています。地中海に突き出るイタリア半島の最大の特徴は、真ん中をアペニン山脈が貫いていることであり、これにより東のアドリア海側と西のティレニア海側の気候が全く異なるものとなります。

地中海性気候が主であり、長い夏と温暖な冬が特徴です。特に北部のアルプス山脈に近い地域では、寒冷な気候も見られ、標高が高くなるとさらに冷涼になります。ヴァッレ・ダオスタでは、標高1300メートルに及ぶブドウ畑もあり、アルプスの影響を受けた独特のワインが生産されています。一方、南部のシチリアやサルデーニャでは、温暖で乾燥した気候がブドウの成長に大きく寄与しています。

主要ブドウ品種

イタリアは、2000種類以上のブドウ品種を持ち、その多くは絶滅の危機に瀕しています。以下に、主要なブドウ品種をいくつか紹介します。

赤ワイン用ブドウ品種

サンジョヴェーゼ Sangiovese
トスカーナ州で広く栽培されており、キアンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノなどの主要なワインに使用されます。

ネッビオーロ Nebbiolo
ピエモンテ州の主要品種で、バローロやバルバレスコなどの高品質なワインに使用されます。

モンテプルチャーノ Montepulciano
アブルッツォ州で広く栽培され、モンテプルチャーノ・ダブルッツォという名のワインに使用されます。

バルベーラ Barbera
ピエモンテ州で栽培され、バルベーラ・ダスティやバルベーラ・ダルバなどのワインに使用されます。

白ワイン用ブドウ品種

トレッビアーノ Trebbiano
イタリア全土で栽培されており、フレッシュで軽やかな白ワインに使用されます。

ヴェルメンティーノ Vermentino
リグーリア州やサルデーニャ州で栽培されており、アロマティックでフルーティな白ワインに使用されます。

ピノ・グリージョ Pinot Grigio
ヴェネト州やフリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア州で栽培され、軽やかでフレッシュな白ワインに使用されます。

ガルガネガ Garganega
ヴェネト州で栽培され、ソアーヴェなどのワインに使用されます。

これらのブドウ品種は、イタリアの多様なテロワールと気候条件に適応し、それぞれの地域で独自の特徴を持つワインを生み出しています。イタリアのワインの多様性と品質は、これらのブドウ品種と地域の特性に大きく依存しています。

2.ワイン法と品質分類

イタリアのワイン法は、トスカーナ大公国のコジモ3世が1716年に自国の著名なワインを保護するためにChianti、Carmignano、Pomino、Val d’Arno di Sopraなどの生産地を線引きしたことに始まります。1963年には政府が最初の原産地呼称法を公布し、以下のように分類されました。

D.O.C.（統制原産地呼称）
ブドウの収量、アルコール度など厳しく制約されたワイン。

D.O.C.G.（統制保証原産地呼称）
さらに制約が厳しく、出荷に際して国の検査を必要とするワイン。

現在のイタリアのワイン法は、EUの分類に基づいて以下のように構成されています。

EUの分類とイタリア国内の分類

	EUの分類	イタリア国内の分類
地理的表示付きワイン	A.O.P.	D.O.P.（保護原産地呼称ワイン） (D.O.C.G.とD.O.C.に分かれる)
	I.G.P.	I.G.P.（保護地理表示ワイン） *「ワインの85％以上がその土地で作られたものである」と定義
地理表示のないワイン		Vino

特殊ワイン

Vino Novello（新酒）
・D.O.C.G.、D.O.C.、I.G.T.にのみ認められる。
・10月30日零時1分より前に消費に供してはならない。
・炭酸ガス浸漬法（MC法）で造られたワインが40％以上含まれていなければならない。
・醸造期間は醸造開始後10日以内で、ブドウを収穫した年の12月31日までに瓶詰めしなくてはならない。

その他のアルコール飲料

ベルモット:
ニガヨモギなどの生薬を混入したピエモンテ州のVermut di Torinoが有名。

リモンチェッロ:
カンパーニア州のソレント半島とその周辺でレモンの皮で造るリキュール。

グラッパ:
ブドウの搾り滓（ヴィナッチャ）を固形蒸留した蒸留酒。

ヴィンサント:
イタリア中部（トスカーナ、ウンブリア）を中心に造られる陰干しワイン。白ブドウを陰干し（2～5ヶ月）してから小樽に入れ、屋根裏部屋で発酵熟成させる。サンジョヴェーゼなどの黒ブドウで造られたものはオッキオ・ディ・ペルニーチェと呼ばれる。

ワイン用語

Bianco　ビアンコ
白ワイン

Rosso　ロッソ
赤ワイン

Rosato　ロザート
ロゼワイン

Cerasuolo　チェラスオーロ
色の濃いロゼから色の淡い赤ワイン

Chiaretto　キアレット
明るい色調のロゼワイン

Vino Santo / Vin Santo　ヴィーノ サント / ヴィン サント
陰干しし糖度を高めたブドウで造る辛口・中甘口・甘口ワイン

Vino Passito　ヴィーノ パッシート
陰干しし糖度を高めたブドウで造る甘口ワイン

Recioto　レチョート
ヴェネト州で使われる名称

Sforzato　スフォルザート
ロンバルディア州で陰干しし糖度を高めたブドウで造る辛口ワイン

Superiore　スーペリオーレ
生産規定のアルコール度を定めた分上回るもの

Riserva　リゼルヴァ
生産規定の法定熟成期間を定めた分上回るもの

Classico　クラシコ
特定の古くからある畑のワインに付ける表示

Vendemmia Tardiva　ヴェンデンミア タルティーヴァ
遅摘みしたブドウで造るワインの表示

イタリアのワイン法と品質分類は、多様なワインを管理し、品質を保証するために重要な役割を果たしています。

3.ワイン産地とその特徴

イタリアは、北から南まで様々な気候と地形が広がっており、全20州、国土の全てでブドウが栽培されています。各州ごとに異なった特徴がありますので、順にみていきましょう。

3-1.北部イタリア

ヴァッレ ダオスタ州　Valle d’Aosta

ヴァッレ ダオスタ州は「アオスタの渓谷」の意味を持ち、イタリアの北西部に位置する面積最小の州です。ワインの生産量も全州中で最も少ないですが、その独自性と品質で知られています。州内のワイン生産は主に標高の高い地域で行われており、アルプス山脈の厳しい気候条件の中で特有の風味を持つワインが生産されています。

【主要ブドウ品種】

Prié Blanc　プリエ ブラン
ヴァッレ・ダオスタのラ・サル村とモルジェ村の狭い範囲でのみ栽培される白ブドウ。寒冷な気候に強く、独特の風味を持つ白ワインを生産します。

Fumin　フミン
ヴァッレ・ダオスタの固有黒ブドウで、濃い色合いと豊かな風味が特徴の赤ワインを生産します。

Petit Rouge　プティ ルージュ
ヴァッレ・ダオスタで最も広く栽培されている固有黒ブドウで、様々なスタイルのワインに使用されます。

【代表的な料理】

Mocetta: カモシカの生ハム。

Polenta e Fontina: ポレンタにフォンティーナチーズをかけた料理。

Zuppa Valpellinese: キャベツ、パン、フォンティーナチーズのスープ。

Gnocchi con Fontina: フォンティーナチーズをかけたニョッキ。

Civet di Camoscio: 野生のカモシカの煮込み。

Costoletta alla Valdostana: フォンティーナチーズをのせた仔牛のカツレツ。

Carebonade: 塩漬け牛肉と玉ねぎの煮込み。

Caffè alla Valdostana: グロッラという木製のカップで飲むグラッパやリキュールの入ったコーヒー。

ヴァッレ ダオスタ州は、そのユニークな地理的条件と文化的背景により、特別なワインと料理を楽しむことができる地域です。

ピエモンテ州　Piemonte

ピエモンテ州は「山の麓」を意味し、アルプス山脈の南側に位置しています。2014年には「ピエモンテの葡萄畑の景観：ランゲ、ロエロ、モンフェッラート」が世界文化遺産に登録されました。州面積はイタリアの中でシチリアに次いで2番目に大きく、ワイン生産量の94％近くをD.O.P.ワインが占めています。特に赤ワインの生産量が59％を占めています。

イタリア王国初代首相のカミッロ・カヴール伯爵（当時はピエモンテ州のグリンツァーネ・カヴール村長）がフランスの醸造家ルイ・ウダールを招聘し、それまで甘口だったバローロを長期熟成辛口赤ワインとして生まれ変わらせました。

【主要ブドウ品種】

Nebbiolo　ネッビオーロ
ピエモンテだけでなく、イタリアで最も高貴な黒ブドウのひとつ。収穫が遅い品種なので、ブドウ畑に霧（Nebbia）がかかるところからこの名がついたと言われています。北ピエモンテではSpanna、ロンバルディア州のヴァルテッリーナではChiavennascaとも呼ばれます。

【主要D.O.C.G.ワイン】

ノヴァーラ県、ヴェルチェッリ県（大陸性気候で冷涼）

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Gattinara	ガッティナーラ	R☆	Spanna (Nebbiolo) 90％以上	ヴェルチェッリ県でネッビオーロをベースに造られる北ピエモンテで最も有名な呼称
Ghemme	ゲンメ	R☆	Spanna (Nebbiolo) 85％以上	ノヴァーラ県で造られ、セシア川対岸で造られるガッティナーラと並んで称される高貴なワイン

アスティ県、アレッサンドリア県（大陸性気候だが比較的温暖）

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Asti	アスティ	B、Sp、VT	Moscato Bianco	アスティ県、アレッサンドリア県、クーネオ県の52の村で造られる香り高い甘口ワイン。発泡性のAsti Spumante（瓶内二次発酵を行う生産者も少数いるが、ほとんどがシャルマ方式）と微発泡のMoscato d’Asti、スティルのヴェンデンミア・タルディーヴァがある。辛口ヴァージョンのAsti Seccoも認められている。
Canelli	カネッリ	Fr	Moscato Bianco	2023年にアスティから独立した微発泡タイプの甘口白ワイン
Brachetto d’Acqui / Acqui	ブラケット・ダックイ / アックイ	R、Sp、Ps	Brachetto	D.O.C.G. Astiの赤ワイン版的楽しまれ方をしている微発泡性の甘口赤ワイン
Gavi / Cortese di Gavi	ガヴィ / コルテーゼ・ディ・ガヴィ	B☆、Sp、Fr	Cortese	赤ワインが有名なピエモンテでは珍しく知名度の高い白ワイン
Terre Alfieri	テッレ・アルフィエーリ	B、R	B: Arneis / R: Nebbiolo（ともに85％以上）	2020年にD.O.C.G.昇格

クーネオ県（やや冷涼で、特にタナロ川の影響を受ける）

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Barolo	バローロ	R☆	Nebbiolo	「ワインの王」「王のワイン」と称される偉大なワイン。生産地区西側（La Morra村、Barolo村）はトルトニアーノという青い泥灰土から、香り高く優美で比較的早飲みの女性的なワインが生まれます。東側（Serralunga d’Alba村、Monforte d’Alba村、Castiglione Falletto村）はエレヴィツィアーノという赤茶色した泥灰土から、厳格でスパイシーな男性的なワインが生まれます。
Barbaresco	バルバレスコ	R☆	Nebbiolo	「バローロの弟分」「ピエモンテの女王」と称される。生産地域はBarbaresco村、Neive村、Treiso村。
Barbera d’Asti	バルベーラ・ダスティ	R★	Barbera 90％以上	バルベーラのD.O.P.では最大の生産量を誇ります。
Dolcetto di Ovada Superiore / Ovada	ドルチェット・ディ・オヴァーダ・スペリオーレ / オヴァーダ	R☆	Dolcetto	ピエモンテ南部でドルチェットの銘柄としては最も東に位置し、スペリオーレのみがD.O.C.G.に昇格。
Dolcetto di Diano d’Alba / Diano d’Alba	ドルチェット・ディ・ディアーノ・ダルバ / ディアーノ・ダルバ	R★	Dolcetto	バローロとバルバレスコの間に位置し、ドルチェットの産地としての歴史は古い。
Dogliani	ドリアーニ	R★	Dolcetto	ドルチェットの起源の地といわれます。
Roero	ロエロ	B、R☆、Sp(B)	B: Arneis / R: Nebbiolo（ともに95％以上）	赤、白ともに認められているD.O.C.G.

【主要D.O.C.ワイン】

Langhe　ランゲ
クーネオ県で造られる幅広いタイプのワインを包括する呼称。

【代表的な料理】

Carne Cruda Battuta: ピエモンテ牛の生肉を刻んだものにレモン、塩をかけたもの

Peperone Ripieno: ピエモンテ名産のピーマンにツナ、ケッパーなどを詰めたもの

Vitello Tonnato: 仔牛の薄切りにツナマヨネーズのソースを添えたもの

Bagna Cauda: オリーヴオイルにアンチョビ、ニンニクを入れ火にかけながら野菜を付けて食べる料理

Tajarin: 卵黄の量が多いことが特徴の卵入り手打ち細麺

Agnolotti del Plin: 肉を詰めた小ぶりのラヴィオリ

Carpe in Carpione: 鯉の南蛮漬け

Brasato: 牛肉の塊を野菜とともにワインでマリネしてから、長時間煮込んだもの

Tartufo Bianco d’Alba: アルバ名産の白トリュフ

Riso di Baraggia Biellese e Vercellese: ヴェルチェッリ産バラッジャ米

リグーリア州　Liguria

リグーリア州はイタリア北西部に位置し、美しい海岸線と山々に囲まれた地域です。中世後期には多くの冒険家や探検家を輩出しましたが、その中でも最も有名なのは新大陸を発見したクリストフォロ・コロンボ（コロンブス）です。リグーリア州はその風光明媚な景観と独自のワインで知られています。

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Rossese di Dolceacqua	ロッセーゼ・ディ・ドルチェアクア	R	Rossese	リグーリアで最も重要な赤ワイン。ロッセーゼ種主体で造られます。
Ormeasco di Pornassio	オルメアスコ・ディ・ポルナッシオ	R	Ormeasco (Dolcetto)	地元でオルメアスコと呼ばれるドルチェットで造られる赤ワイン。
Cinque Terre / Cinque Terre Sciacchetrà	チンクエ・テッレ / チンクエ・テッレ・シャケトラ	B / B (甘)	Bosco, Albarola, Vermentino	ボスコ、アルバローラ、ヴェルメンティーノで造られる白ワイン。チンクエ・テッレは5つの村の総称で、海に迫る絶壁の段々畑の風景は世界遺産に登録されています。
Colli di Luni	コッリ・ディ・ルニ	B, R	Vermentino, Sangiovese	リグーリア州とトスカーナ州にまたがる呼称。

【料理】

Pansoti con la Salsa di Noci: ラヴィオリにクルミのソースをかけた料理

Buridda: 干鱈などを使ったスープ

Ciuppin: 魚を裏ごししたスープ

Cappon Magro: 固いビスケットを敷き詰めた大皿の上に10種類近い魚介や野菜を盛り付ける豪華な料理

Cima alla Genovese: 仔牛のミンチ、胸腺肉、野菜、ゆで卵、松の実などを大きなロールにして火を通し、冷製にして食する

Riviera Ligureのオリーヴオイル: D.O.P.認定のオリーヴオイル

ロンバルディア州　Lombardia

ロンバルディア州は、イタリア北部に位置し、イタリア最大のガルダ湖やイゼオ湖など、多くの湖があります。これらの湖は微気候を造り出し、ブドウ栽培に非常に適した環境を提供しています。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Valtellina Superiore	ヴァルテッリーナ・スペリオーレ	R★☆	Chiavennasca (Nebbiolo) 90%以上	Maroggia、Sassella、Grumello、Inferuno、Valgellaの5つのサブゾーンが指定されています。
Sforzato di Valtellina / Sfurzat di Valtellina	スフォルツァート・ディ・ヴァルテッリーナ / スフルツァート・ディ・ヴァルテッリーナ	R、Sf	Chiavennasca (Nebbiolo) 90%以上	Sforzatoとは「強化した」を意味し、18世紀初頭には存在し薬酒として扱われていた。
Franciacorta	フランチャコルタ	Sp(B、Rs)☆、Cr(B)	Pinot Nero、Chardonnay、Pinot Bianco、Erbamat	イゼオ湖の南2～400mの丘陵地でブドウ栽培され、瓶内二次発酵によって造られるスプマンテ。
Oltrepò Pavese Metodo Classico	オルトレポ・パヴェーゼ・メトド・クラッシコ	Sp(B、Rs)、Cr(Rs)	Pinot Nero、Chardonnay、Pinot Grigio、Pinot Bianco	Pinot Nero主体で瓶内二次発酵にて造られる辛口スプマンテ。
Moscato di Scanzo / Scanzo	モスカート・ディ・スカンツォ / スカンツォ	R	Moscato di Scanzo	陰干ししたブドウで造る甘口赤ワイン。

【料理】

Salame Milano: ミラノ風サラミ

Bresaola: ヴァルテッリーナ名産の牛肉の生ハム

Risotto alla Milanese: サフラン風味のリゾット

Minestrone: 野菜のスープ

Tortelli di Zucca: マンドゥア県のカボチャのトルテッリ

Costoletta alla Milanese: ミラノ風仔牛のカツレツ

Ossobuco: 仔牛すね肉の輪切りの煮込み

Busecca: 仔牛の胃袋、インゲン豆、トマト煮込み

Cassoeula: 豚肉、豚の頭、縮麺キャベツの煮込み

Panettone: クリスマスの焼き菓子

トレンティーノ アルト アディジェ州　Trentino-Alto Adige

トレンティーノ・アルト・アディジェ州は、イタリアで最も北に位置する州であり、北のボルツァーノ自治県（アルト・アディジェ地方）と南のトレント自治県（トレンティーノ地方）に分かれています。この州は、州の真ん中を北から南にアディジェ川が流れ、その両側には世界遺産のドロミーティ山塊が連なっています。州の文化と歴史は、地域ごとに異なり、ドイツ語圏とイタリア語圏の両方の影響を受けています。

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Trento	トレント	Sp(B、Rs)☆	Chardonnay、Pinot Bianco、Pinot Nero、Pinot Meunier	瓶内二次発酵で造られるスプマンテ。
Südtiroler (Alto Adige)	ズードティロール（アルト・アディジェ）	B、R	多様な品種（Gewürztraminer、Pinot Grigio、Sauvignon、Chardonnay、Pinot Bianco、Lagrein、Pinot Neroなど）	高品質な白ワインと赤ワインが生産される。

【料理】

Forelle Blau: クールブイヨンで煮たアルプスの鱒

Leberknödelsuppe: 仔牛のレバ―を入れたパンの団子を浮かべたスープ

トレンティーノ・アルト・アディジェ州は、イタリアとドイツの文化が交錯する地域であり、独自の歴史と自然環境を活かしたワインと料理が楽しめます。

ヴェネト州　Veneto

ヴェネト州はイタリア北東部に位置し、さまざまな気候条件と豊かな文化遺産を誇ります。北部のベッルーノ県は寒冷な気候で、アドリア海周辺は地中海気候、それ以外は亜大陸性気候です。ロンバルディア州との境にあるガルダ湖周辺は特に温暖で、州全体でワイン生産量が多く、D.O.P.ワインは77％で白ワインが約81％を占めます。ヴェローナでは国際ワイン見本市ヴィーニタリーが毎年開催され、「イタリアワインの首都」とされています。ヴェネツィアは東方貿易の独占により繁栄し、「アドリア海の女王」と称されました。

【主要ブドウ品種】

Glera　グレーラ
以前はプロセッコと呼ばれていた白ブドウ。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Bardolino Superiore	バルドリーノ・スペリオーレ	R、Cl	Corvina Veronese 主体
Amarone della Valpolicella	アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ	R☆、Rc、Cl	Corvina Veronese 主体	Apassimentoにより糖度の高いモストにし、ほぼ全て発酵させるためアルコールの高いタイプ。
Recioto della Valpolicella	レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ	Rc(R)、Sp、Cl	Corvina Veronese 主体	甘口に仕上げたタイプ。
Soave Superiore	ソアヴェ・スペリオーレ	B☆、Cl	Garganega 70％以上
Recioto di Soave	レチョート・ディ・ソアヴェ	Rc(B)、Sp、Cl	Garganega 70％以上	糖度を上げ、甘口に仕上げる。
Recioto di Gambellara	レチョート・ディ・ガンベッラーラ	Rc(B)、Sp、Cl	Garganega
Lison	リゾン	B、Cl	Tai 主体	以前はトカイ・フリウラーノと呼ばれていた品種。
Bagnoli Friularo / Friularo Bagnoli	バニョリ・フリウラーロ / フリウラーロ・バニョリ	R☆、VT、Ps、Cl	Raboso Piave 90％以上
Colli Euganei Fior d’Arancio	コッリ・エウガネイ・フィオール・ダランチョ	B、Sp、Ps	Moscato Giallo 主体	Fior d’Arancioはオレンジの花の意味。
Colli Asolani Prosecco / Asolo Prosecco	コッリ・アソラーニ・プロセッコ / アソロ・プロセッコ	Sp(B)★、Fr、B	Glera 主体	シャルマ法が主流だが、瓶内二次発酵も可能。
Conegliano Valdobbiadene-Prosecco	コネリアーノ・ヴァルドッビアデーネ・プロセッコ	Sp(B)★、Fr、B	Glera 主体	シャルマ法が主流だが、瓶内二次発酵も可能。

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Prosecco	プロセッコ	Sp(Rs、B)、Fr(B)、B	Glera 主体	プロセッコ・ロゼという新しいカテゴリーが誕生。グレーラにピノ・ネーロ（10～15％）をブレンドし、シャルマ方式で造られる。

【料理】

Sarde in Saor: 鰯の南蛮漬け

Bigoli in Salsa di Acciughe: うどんのような手打ち麺をアンチョビソースで和えた料理

Risi e Bisi: グリンピースと米を煮込んだリゾット

Radicchio Rosso di Treviso: トレヴィーゾ名産のトレビス

Asparago Bianco di Bassano del Grappa: バッサーノ・デル・グラッパ名産のホワイトアスパラ

Baccalà alla Vicentina: 干鱈をミルクで煮込んだ料理

Fegato alla Veneziana: 仔牛のレバーを玉ねぎと炒めた料理

Pastissada de Caval: 馬肉を長時間煮込んだシチュー

Riso Vialone Nano Veronese: ヴェローナ近郊で栽培されている米の品種

フリウリ ヴェネツィア ジューリア州　Friuli Venezia Giulia

フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州は、白ワインの産地として知られています。特にCollio Goriziano（Collio）やFriuli Colli Orientaliは、イタリアを代表する高級白ワイン産地として高く評価されています。近年、この地区の一部の生産者が果皮や種子と共に発酵・マセラシオンすることで、黄色やオレンジ色を帯び、酸化熟成の進んだニュアンスや強いタンニンを持つ個性的なスタイルの白ワインを造るようになりました。

【主要ブドウ品種】

Ribolla Gialla　リボッラ ジャッラ
フリウリ⁻ヴェネツィア・ジューリア州東部とスロヴェニアの白ブドウ。

Refosco dal Peduncolo Rosso　レフォスコ ダル ペデュンコロ ロッソ
フリウリ⁻ヴェネツィア・ジューリア州を代表する固有黒ブドウ。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Colli Orientali del Friuli Picolit	コッリ・オリエンタリ・デル・フリウリ・ピコリット	B☆(甘口)	Picolit 85%以上	味わいのタイプは淡い黄金色で穏やかな甘味のamabileと濃い黄金色でリッチで濃醇なdolceがある
Ramandolo	ラマンドロ	B(甘口)	Verduzzo Friulano	フリウリでも歴史の古いヴェルドゥッツォ・フリウラーノを陰干しして発酵後、木樽で熟成させる
Rosazzo	ロサッツォ	B	Friulano主体	フリウラーノの栽培に最適な土地と言われ、良年のものは数年の熟成に耐える
Lison	リゾン	B、Cl	Tai主体	エリアはヴェネト州とフリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州にまたがっている

【料理】

Prosciutto di San Daniele: サン・ダニエーレ産生ハム

Frico: すりおろしたモンタージオチーズの粉にトウモロコシ粉を混ぜて焼いた薄いオムレツのような料理

Jota: 豚肉、スモーク・パンチェッタ、インゲン豆、クラウト、トウモロコシ粉の濃厚なスープ

Goulash: パプリカを使ったハンガリー風牛肉のシチュー

Gnocci alle Prugne: バター、シナモン、砂糖のソースの干しプラム入りのニョッキ

エミリア ロマーニャ州　Emilia-Romagna

エミリア ロマーニャ州は、ボローニャを境に西側をエミリア、東側をロマーニャという2つの地方に分けられます。一昔前までは甘口のシンプルなワインが大量にアメリカに輸出され、愛好家から軽視されていましたが、近年では辛口のランブルスコを造るようになり、品質が向上しました。

【主要D.O.C.G.ワイン】

エミリア地方

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Colli Bolognesi Classico Pignoletto	コッリ・ボロニェージ・クラッシコ・ピニョレット	B	Pignoletto主体	この地ではPignolettoで親しまれているが、ウンブリア州などではGrechettoと呼ばれるギリシャ起源の品種

ロマーニャ地方

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Romagna Albana	ロマーニャ・アルバーナ	B(辛～甘)、Ps(B)☆	Albana	甘口から辛口まで幅広いスタイルがあり、スパークリングも存在する

【主要D.O.C.ワイン】

Lambrusco di Sorbara　ランブルスコ ディ ソルバーラ
Sp、Fr(R、Rs)

Lambrusco Grasparossa di Castelvetro　ランブルスコ グラスパロッサ ディ カステルヴェトロ
Sp、Fr(R、Rs)

【料理】

Prosciutto e Melone: パルマ産生ハムのメロン添え

Tortellini: 生ハムや肉を詰めたボローニャのパスタ

Tagliatelle alla Bolognese: ミートソースをかけた平打ちパスタ

Lasagna al Forno: パスタ生地、ミートソース、ベシャメルソースを何層にも重ねてオーヴンで焼き上げる料理

Cotoletta alla Bolognese: 生ハムとチーズをのせた仔牛のカツレツ

Bollito Misto: 牛肉の様々な部位、鶏肉、コテキーノ、ザンポーネなどを一緒に茹でた料理

3-2.中部イタリア

トスカーナ州　Toscana

トスカーナ州は、生産量は中規模ですが、D.O.P.ワインが63％を占める高品質ワインの産地です。特に赤ワインが87％と際立って多いです。1970年代から始まった「イタリアワイン・ルネッサンス」と呼ばれる、イタリアワイン近代化の牽引役を果たしたのはキアンティ・クラッシコ地区の生産者で、規則にとらわれない自由な発想で生み出したワインは「スーパータスカン」としてもてはやされ、国際的に知名度を得ました。ベッティーノ・リカーゾリ男爵は、今日のキアンティワインのベースとなる品種構成を1870年前後に定めました。

黒ブドウ：70％ サンジョヴェーゼ
黒ブドウ：20％ カナイオーロ
白ブドウ：10％ マルヴァジア・デル・キアンティ

内陸部の土壌は基本的には粘土石灰質土壌ですが、キャンティ・クラシコ地区やモンタルチーノでは、ガレストロと呼ばれる泥灰土が多く見られます。

【主要D.O.C.G.ワイン】

内陸部（フィレンツェ県、シエナ県、アレッツォ県）

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Brunello di Montalcino	ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ	R☆	Sangiovese（Brunello）100%	ブドウ収穫年より5年目の12月末まで熟成（木樽熟成2年、瓶内熟成4カ月が義務付け）
Carmignano	カルミニャーノ	R☆	Sangiovese 50%以上	昔からCabernet Sauvignonがブレンドされ、18世紀からUva francescaと呼ばれていた
Chianti	キアンティ	R★☆	Sangiovese 70%以上（白ブドウは10％まで）	アルコール11.5％以上、収穫翌年3月より消費可能。スペリオーレとリゼルヴァもあり
Chianti Classico	キアンティ・クラッシコ	R☆	Sangiovese 80%以上（白ブドウ使用不可）	フィレンツェとシエナの間に位置し、UGAとして11地区名がラベル表記可能
Vino Nobile di Montepulciano	ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ	R☆	Sangiovese（Prugnolo Gentile）70%以上	中世から知られる名酒で、「優雅で高貴なワイン」と称される
Vernaccia di San Gimignano	ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ	B☆	Vernaccia di San Gimignano 85%以上	トスカーナ州で唯一の白ワインのD.O.C.G.

海岸部（ルッカ県、ピサ県、グロッセート県、リヴォルノ県）

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Morellino di Scansano	モレッリーノ・ディ・スカンサーノ	R☆	Sangiovese 85％以上	トスカーナ州のD.O.C.G.の中で最も南に位置する
Elba Aleatico Passito / Aleatico Passito dell’Elba	エルバ・アレアティコ・パッシート	R、Ps	Aleatico	陰干ししたブドウから造る甘口赤ワイン
Montecucco Sangiovese	モンテクッコ・サンジョヴェーゼ	R☆	Sangiovese 90％以上	–

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Bolgheri	ボルゲリ	B、R★、Rs	B：Vermentino、Sauvignon / R、Rs：Cabernet Sauvignon、Merlot、Sangiovese	–
Bolgheri Sassicaia	ボルゲリ・サッシカイア	R	Cabernet Sauvignon	ボルドー品種ワイン産地として名声を高めた

【料理】

Crostini: 鶏のレバー、仔牛の脾臓などで作ったパテをのせたパン

Panzanella: パン、フレッシュトマト、玉ねぎ、バジリコを入れたサラダ

Pappardelle con il Sugo di Lepre: 幅広の手打ちパスタに野兎のソースをかけたもの

Ribollita: 野菜のスープ

Pappa al Pomodoro: トマトソースにパンを放り込んで煮込んだ料理

Cacciucco: トウガラシ、ニンニク、トマトを使った魚のスープ

Bistecca alla Fiorentina: 厚切りのTボーンステーキ

Arista: 豚背肉の塊をローズマリー、ニンニクを効かせてローストした料理

Chanina: キアーナの谷で飼育される牛

ウンブリア州　Umbria

ウンブリア州はイタリア半島の中心部に位置し、海には接していない内陸州です。州土の70%を占める緑の丘陵地帯は美しく、イタリアの「緑の心臓」と呼ばれています。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Montefalco Sagrantino	モンテファルコ・サグランティーノ	R、Ps	Sagrantino	サグランティーノ種は主にペルージャ周辺で栽培されている個性的な黒ブドウ
Torgiano Rosso Riserva	トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァ	R	Sangiovese 70％以上	–

【料理】

Spaghetti con il Tartufo Nero: 黒トリュフを和えたスパゲティ

Minestra di Farro: スペルト小麦のスープ

Porchetta alla Perugina: ハーブを詰め丸ごと焼き上げた子豚

Lenticchie di Castelluccio: カステッルッチョ村のレンズ豆

マルケ州　Marche

マルケ州はイタリアの中部に位置し、北はエミリア・ロマーニャ州、東はアドリア海、南はアブルッツォ州とラツィオ州、西はトスカーナ州とウンブリア州に接しています。州の西側はアペニン山脈に沿って広がっています。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Castelli di Jesi Verdicchio Riserva	カステッリ・ディ・イエージ・ヴェルディッキオ・リゼルヴァ	B、Cl	Verdicchio	–
Verdicchio di Matelica Riserva	ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ・リゼルヴァ	B	Verdicchio	–
Cònero	コーネロ	R	Montepulciano 85％以上、 Sangiovese	古代ローマ時代より「アドリア海沿岸で最も優れた赤ワイン」として知られている
Offida	オッフィダ	R、B	R：Montepulciano 85％以上 / B： Pecorino、 Passerina	–
Vernaccia di Serrapetrona	ヴェルナッチャ・ディ・セッラペトローナ	R、Sp	Vernaccia Nera 85％以上	最低40％のブドウをアパッシメントして造られ、辛口から甘口まで幅がある発泡性の赤ワイン

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Verdicchio dei Castelli di Jesi	ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ	B★、Sp、Ps、Cl	Verdicchio	1950年代にアンフォラ型のボトルで世界的に大成功を収めた

【料理】

Olive Ascolane: 大粒のグリーンオリーヴにミンチ肉を詰めたフライ

Vincisgrassi: 生ハム、パンチェッタ、鶏の内臓などのソースを入れた濃厚なラザーニャ

Brodetto di pesce all’ Anconetana: トマトを使ったアンコーナ風魚介スープ

Stoccafisso all’ Anconetana: トマトで煮た干鱈の料理

Coniglio in Porchetta alla Marchigiana: 詰め物をしたウサギのオーヴン焼き

ラツィオ州　Lazio

ラツィオ州はイタリアの中心部に位置し、ローマの東南郊外にはカステッリ・ロマーニと呼ばれるアルバニー丘陵地帯が広がっています。特に白ワインの生産が盛んな地域として知られています。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Cesanese del Piglio / Piglio	チェザネーゼ・デル・ピリオ / ピリオ	R★☆	Cesanese 90%以上	–
Frascati Superiore	フラスカーティ・スペリオーレ	B☆	Malvasia Bianca di Candia、Malvasia del Lazio 主体	カステッリ・ロマーニ地区の中でも品質が優れているFrascatiの中で、より厳しい生産規則をもつ。詩人ゲーテも称賛していた
Cannellino di Frascati	カンネリーノ・ディ・フラスカーティ	B（甘）	Malvasia Bianca di Candia、Malvasia del Lazio 主体	甘口は土地の伝統でDolceと言わずにCannellinoといい、最低残糖分35g/ｌ以上

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	説明
Est! Est!! Est!!! Di Montefiascone	エスト！エスト！！エスト！！！・ディ・モンテフィアスコーネ	B、Sp、Cl	–

【料理】

Supplì di Riso: 生ハムやモッツァレラを入れた小さめの米のコロッケ

Carciofi alla Giudia: アーティチョークを揚げた料理

Spaghetti Cacio e Pepe: ペコリーノ・ロマーノと胡椒で和えたスパゲッティ

Spaghetti alla Carbonara: パンチェッタと卵、ペコリーノ・ロマーノ、胡椒のソースのスパゲッティ

Bucatini all’Amatriciana: グアンチャーレ（塩をまぶして乾燥させた豚のほほ肉）、トマト、トウガラシ、ペコリーノ・ロマーノのソースで和えたパスタ料理

Abbacchio allo Scottadito: 乳飲み仔羊のアバラ肉を焼いた料理

Coda alla Vaccinara: 白ワインとトマトで煮込んだ牛テール

Pollo alla Romana: ピーマンとトマトで煮込んだ鶏肉料理

アブルッツォ州　Abruzzo

アブルッツォ州はイタリア半島の中央に位置し、アペニン山脈が走っています。特にグラン・サッソ山塊のコルノ・グランデ（2912m）はアペニン山脈の最高峰であり、マイエッラ山塊のモンテ・アマーロ（2793m）も高く、州内には多くの高山があります。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	主要品種	説明
Montepulciano d’Abruzzo Colline Teramane	モンテプルチアーノ・ダブルッツォ・コッリーネ・テラマーネ	R☆	Montepulciano 90%以上、 Sangiovese	–
Terre Tollesi / Tullum	テッレ・トレージ / トゥルム	B、R☆、Sp	R：Montepulciano / B：Pecorino、Passerina、Chardonnay	スプマンテの主要品種はChardonnay （60％以上）

【料理】

Mortadella di Campotosto: 真ん中に四角柱形のラードが入っているサラミ

Ventricina: 胡椒とオレンジの皮で味付けされたキエーティ県の豚肉のサラミ

Maccheroni alla Chitarra: 角の立ったパスタを牛、豚、羊のミックスしたミートソースで和えた料理

Brodetto di Pesce alla Pescarese: ペスカーラ風魚介のスープ

Porchetta: 豚の丸焼き

Pecora alla Cottora: スパイスとハーブを効かせて長時間煮込む羊肉料理

Zafferano: アブルッツォのサフラン

モリーゼ州　Molise

モリーゼ州はイタリア半島の中央南部に位置し、比較的小さな州ですが、独自のワイン文化を持っています。主要なブドウ品種やワインの産地としても注目されています。

【主要ブドウ品種】

Tintilia　ティンティリア
モリーゼ州だけで栽培されている固有の黒ブドウ

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	説明
Biferno	ビフェルノ	B、R★☆、Rs	–
Pentro di Isernia / Pentro	ペントロ・ディ・イゼルニア / ペントロ	B、R☆、Rs	–

【料理】

Tacconi: 四角いパスタにミートソースをかけた料理

Mazzrelle d’Agnello: 羊の内臓をスパイスで煮込んだ料理

Olio Molise: D.O.P.認定のオリーヴオイル

3-3.南部イタリア

カンパーニャ州　Campania

カンパーニア州は古代ギリシャの植民地マグナ・グラエキアとして栄え、ナポリは「ネアポリス（新しい都市）」と呼ばれていました。今でも活動しているヴェズヴィウス火山や死火山ロッカモンフィーナなど、多くの火山が存在し、火山性土壌が広がっています。

【主要ブドウ品種】

Falanghina　ファランギーナ
カンパーニア州、特にカンピ・フレグレイ地区やサンニオ地方で栽培されている白ブドウ。

Coda di Volpe　コーダ ディ ヴォルペ
イルピア地方で栽培される白ブドウで、「狐のしっぽ」を意味する。

Piedirosso　ピエディロッソ
カンパーニア州で栽培されている固有の黒ブドウ。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Taurasi	タウラージ	R☆	アヴェッリーノ県イルピニア地方の火山性土壌丘陵地帯（標高400～700m）で造られる厳格な赤ワイン	Aglianico 85%以上
Aglianico del Taburno	アリアニコ・デル・タブルノ	R☆、Rs	–	Aglianico 85%以上
Greco di Tufo	グレコ・ディ・トゥーフォ	B、Sp	凝灰岩土壌（トゥーフォ）でグレーコ種で造られる	Greco 85%以上
Fiano di Avellino	フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ	B	–	Fiano 85%以上

【主要D.O.C.ワイン】

Vesuvio　ヴェスヴィオ
B、R、Rs、Sp、Lq（この呼称に含まれるLacryma Christiは「キリストの涙」を意味し、根強い人気がある）

【料理】

Parmigiana di melanzane: 茄子、モッツァレッラ、トマトソース、バジリコを重ねて焼いた料理

Pizza Margherita: トマト・水牛のモッツァレッラ・バジリコのピッツァ

Spaghetti Aglio Olio e Peperoncino: ニンニク、オリーヴオイル、トウガラシで味付けたスパゲッティ

Spaghetti alle Vongole: アサリのスパゲッティ

Spaghetti alla Puttanesca: アンチョビ、ケッパー、オリーヴをトマトソースで和えたスパゲッティ

Polpo alla Luciana: トマト、ニンニク、トウガラシでタコを長時間煮込んだサンタ・ルチアの料理

Bistecca alla Pizzaiola: ニンニク、オレガノ、ケッパーのトマトソースをかけた仔牛のステーキ

Sartù di Riso: ミートボール、鶏の内臓、モッツァレッラ、野菜を米と混ぜて型に入れて焼いた宮廷料理

プーリア州　Puglia

プーリア州はイタリアで最も東に位置し、長い海岸線と温暖な気候を持つため、ブドウ栽培に適しています。この地域は、特にフルーティーで力強い赤ワインの産地として知られています。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Primitivo di Manduria Dolce Naturale	プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア・ドルチェ・ナトゥラーレ	R	カリフォルニアのジンファンデルと同じ品種のプリミティーヴォから造られる甘口赤ワイン。元々は半干しブドウから造られていたが、現在は乾燥ブドウを使用	Primitivo
Castel del Monte Bombino Nero	カステル・デル・モンテ・ボンビーノ・ネーロ	Rs	D.O.C.G.としては珍しいRosatoの銘柄。やや濃いめの色調	Bombino Nero 主体
Castel del Monte Nero di Troia Riserva	カステル・デル・モンテ・ネーロ・ディ・トロイア・リゼルヴァ	R	Nero di Troia 主体
Castel del Monte Rosso Riserva	カステル・デル・モンテ・ロッソ・リゼルヴァ	R	Nero di Troia 主体

【料理】

Orecchiette con Cime di Rapa: 小さな耳の形をしたオレッキエッテパスタを菜の花に似た野菜で和えた料理

Riso e Patate: 米とジャガイモを煮たスープとリゾットの間のような料理

Agnello al Forno: 塩、ニンニク、ローズマリーで風味を付けた仔羊のロースト

バジリカータ州　Basilicata

古代にはルカーニアと呼ばれ、マグナ・グラエキアとしてギリシャ人のもとで栄えた地域です。バジリカータ州は山岳地帯が多く、南側にはカラブリアとの境界となるポッリーノ山塊があり、北西部には死火山のヴルトゥレ山があります。

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Aglianico del Vulture Superiore	アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・スーペリオーレ	R☆	古代ギリシャより紀元前7〜6世紀にもたらされたことから、品種名は「ギリシャの」を意味する	Aglianico

【料理】

Salame Pezzente: 豚の内臓などを使ったサラミ

Soppressata: 粗挽きの豚肉のサラミ

Baccalà con i Peperoni Cruschi: 乾燥させた赤トウガラシを茹でた塩漬け鱈と合わせた料理

Pignata: 羊肉、サラミ、トマト、ジャガイモ、赤トウガラシなどを陶器の鍋に入れ、粘土で密封して暖炉で煮る伝統的料理

カラブリア州　Calabria

カラブリア州はイタリア半島のつま先にあたる最南端に位置しています。古代にはカラブリアのワインの名声が非常に高く、ギリシャ人たちが「エノートリア（ワインの大地）」と呼ぶようになったのは、カラブリアのイオニア海岸沿いのブドウ畑だったと伝えられています。

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Cirò	チロ	B、R★☆、Rs、Cl	古代から名高いワイン産地	R、Rs：Galioppo / B：Greco Bianco

【料理】

Nduja: トウガラシの入ったサラミ

Maccheroni alla Pastora: リコッタで和えたペンネに似た手打ちのパスタ

Sarde alla Menta: ミントで風味を付けた鰯の南蛮漬け

Tortiera di Alici: ケッパー、胡椒で味付けた鰯のグラタン

Tonno Bollito: 茹でたマグロにオリーヴ・オイル、パセリ、黒胡椒をかけた料理

Capretto allo Spiedo: 串焼きにした仔山羊料理

シチリア州　Sicilia

シチリア州はイタリア最南端に位置し、地中海最大の島であると同時にイタリアの20州中で最大の面積を誇ります。島の北東部には今でも活発な活動を続けるエトナ火山(3343m)があり、火山性土壌が豊富です。地中海性気候の影響を受け、島の南西部はアフリカの影響で非常に暑く、シロッコというサハラ砂漠からの風が吹きます。ローマ帝国時代には穀物栽培が盛んで、「ローマの穀物庫」とも呼ばれていました。

【主要ブドウ品種】

白ブドウ

Catarratto　カタラット
シチリアで最も栽培されている白ブドウ

Ansonica　アンソニカ
シチリアではInzolia、トスカーナではAnsonicaと呼ばれる

Zibibbo　ジビッボ
モスカート・ダレッサンドリアのシチリアでの呼び名

Grecanico　グレカニコ
シチリアで栽培されている白ブドウ

Carricante　カリッカンテ
エトナの固有白ブドウ

黒ブドウ

Nero d’Avola　ネロ ダーヴォラ
別名Calabrese、シチリアを代表する黒ブドウ

Nerello Mascarese　ネレッロ マスカレーゼ
シチリア島北東部の黒ブドウでエトナの代表品種

Frappato　フラッパート
シチリア東部で栽培されている黒ブドウ

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Cerasuolo di Vittoria	チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリア	R、Cl	一般的に他の地域ではロゼワインを指すが、ここでは赤ワイン	Nero d’Avola（Calabrese） 50～70％、Frappato 30～50％

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Marsala	マルサラ	B★☆、R★☆	島の西端で造られる酒精強化ワイン、1773年にイギリス人ジョン・ウッドハウスが生み出した	B：Cataratto、Grillo、R：Pignatello、Calabrese、Nerello Mascalese
Pantelleria	パンテッレリーア	B、Sp、Fr、Ps、Lq	シチリア島よりはるか南の火山土壌の島で「地中海の黒い真珠」と讃えられている	Zibibbo（Moscato）
Etna	エトナ	B★、R☆、Rs、Sp	エトナ火山周辺で生産されるワイン	–
Alcamo	アルカモ	B、R☆、Rs、Sp、VT、Nv、Cl	幅広いワインタイプを含む	–

【料理】

Arancino di Riso: 大きなお米のコロッケ

Insalata di Arance: オレンジにオリーヴ・オイル、塩、胡椒をかけたサラダ

Caponata: トマト、茄子などの野菜の煮込み料理

Pasta con Sarde: 鰯、干しブドウ、松の実、フェンネルで和えたパスタ

Pasta alla Norma: 茄子とトマトのソースに熟成させたリコッタ・サラータをかけたカターニア名産のパスタ

Cous Cous di Pesce: トラパニ周辺で食べられる魚介のスープをかけたクスクス

Farsumagru: 仔牛肉にゆで卵、サルシッチャ、モルタデッラ、パンチェッタ、カチョカヴァッロ、ペコリーノ、グリンピースなどを詰めて巻き、トマトソースで煮込んだ料理

Cannoli: 筒状の揚げた生地にリコッタと柑橘類の皮の砂糖漬けを添えたお菓子

Cassata Siciliana: スポンジケーキにリコッタ、アーモンドペースト、ドライフルーツを重ねた非常に甘いケーキ

サルデーニャ州　Sardegna

サルディーニャ州は、地中海でシチリアに次いで2番目に大きな島で、イタリアの州内では3番目に大きな面積を持っています。北にはコルシカ島が位置しており、豊かな自然と独自の文化を持つ地域です。

【主要ブドウ品種】

Cannonau　カンノナウ
サルディーニャ州で最も多く栽培されている黒ブドウ

【主要D.O.C.G.ワイン】

D.O.C.G.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Vermentino di Gallura / Sardegna Vermentino di Gallura	ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ / サルデーニャ・ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ	B★、Sp、Fr、Ps、VT	スペイン伝来のVermentino種で造られる	Vermentino 主体

【主要D.O.C.ワイン】

D.O.C.	読み方	タイプ	説明	主要品種
Moscato di Sorso-Sennori	モスカート・ディ・ソッロ・センノリ	B、Sp、Ps、Lq	北西部のサッサリ周辺で造られる香り高く濃厚な甘口ワイン	Moscato Bianco
Vernaccia di Oristano	ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ	B★☆、Lq	シェリーに似てフロールを発生させ緩やかな酸化熟成をする	Vernaccia di Oristano
Malvasia di Bosa	マルヴァジア・ディ・ボーザ	B☆、Sp、Ps、Lq	極上のシェリーのような優美さをもつ酸化熟成したワインで、熟成段階でフロールが発生することも多い	Malvasia di Sardegna

【料理】

Malloreddus: トマト、サルシッチャ、ペコリーノの濃厚なソースで和えたセモリナ粉のニョッキ

Su Farru: 小麦とチーズのスープ

Arragosta Arrosta: 伊勢海老のロースト

Arragosta alla Griglia: 伊勢海老の炭火焼き

Porceddu: 仔豚の丸焼き

Bottarga: カラスミ

Pane Carasau / Carta da Musica: 楽譜と呼ばれる非常に薄い紙の様なパン

4.まとめ

イタリアは、古代からワイン生産が盛んな国であり、その多様性と品質の高さで世界的に知られています。イタリア全土には20の州があり、それぞれが独自のワイン文化と特色を持っています。本記事では、各州の主要ブドウ品種や代表的なD.O.C.G.ワイン、伝統的な料理について詳述しました。

【主要なポイント】

北部イタリア

・ピエモンテ州では、Nebbioloから造られる「Barolo」や「Barbaresco」が有名。
・ロンバルディア州は、スパークリングワイン「Franciacorta」で知られています。
・ヴェネト州は、世界的に有名な「Prosecco」や「Amarone della Valpolicella」を生産。

中部イタリア

・トスカーナ州は、サンジョヴェーゼを主体とする「Chianti Classico」や「Brunello di Montalcino」が代表的。
・ウンブリア州の「Montefalco Sagrantino」は個性的な赤ワインとして知られています。

南部イタリア

・カンパーニア州は、火山性土壌で育った「Taurasi」や「Fiano di Avellino」が特徴。
・プーリア州では、Primitivoを使ったワインが注目されています。
・シチリア州は、Nero d’AvolaやZibibboなど多様なブドウ品種を持ち、「Marsala」などの酒精強化ワインも有名。
・サルディーニャ州は、Vermentinoを主体とする白ワイン「Vermentino di Gallura」が特に評価されています。

イタリアワインは、地理的条件や歴史的背景によって多様なスタイルを持ち、その魅力は尽きません。これらの情報をもとに、イタリアワインの深い理解とその魅力を楽しんでいただければ幸いです。