[2024年最新]ソムメモ【第14回 ラングドック・ルーション地方】ソムリエ完全解説
はじめに
ラングドック・ルーション地方は、フランス南部の地中海沿岸に広がる広大なワイン産地です。この地域は、温暖な気候と多様な土壌条件により、非常に多彩なワインを生産しています。歴史的には、19世紀に鉄道の開通によって大きな発展を遂げ、現在では世界中のワイン愛好家から注目される地域となっています。
ラングドック・ルーション地方は、主に赤ワインの生産で知られていますが、白ワイン、ロゼワイン、スパークリングワイン、甘口ワインなど、幅広いワインスタイルが揃っています。多くのA.O.C.とI.G.P.が存在し、各地域ごとに特有のブドウ品種とワインスタイルが見られます。
本記事では、ソムリエ試験対策として、ラングドック・ルーション地方のワインに関する重要な情報を詳しく解説します。地域の概略、主要ブドウ品種、主要A.O.C.、VDN/VDLについての知識を深め、試験に向けた準備をしっかりと整えましょう。
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目次
1.概略
2.主要ブドウ品種
3.主要A.O.C.
4.VDN / VDLについて
5.まとめ
1.概略
ラングドック・ルーション地方は、約20万ヘクタールのブドウ栽培面積を誇り、年間ワイン生産量は約1150万ヘクトリットルに達します。フランス南部、地中海沿岸に位置し、プロヴァンス地方とはローヌ川を境に西隣しています。この地域は、急速にA.O.C.が増えている一方で、全体の70%以上がI.G.P.ワインであり、フランス全体のI.G.P.ワインの80%に相当します。
ラングドック・ルーションという名称はワインラベルに表記されることはありませんが、管理者、小売業者、作家、その他のワイン専門家によって長い間使用されています。この名称は、フランス南部のニームやモンペリエから始まり、地中海沿岸やスペイン国境までのさまざまなアペラシオンをまとめたものです。
この地域には、コート・デュ・ルーションやラングドックAOPだけでなく、ミネルヴォワ(そのサブゾーンを含む)やバニュルスなど、より地理的に焦点を当てたAOCも含まれます。また、さまざまなIGPもこの地域に含まれます。1980年代にラングドックとルーションを統合する行政地域が設立されましたが、2016年以降は「オクシタニー」という新しい地域の一部となりました。
地理的および文化的に、ラングドックとルーションは分かれています。ラングドックは13世紀以来フランスに属しており、典型的なフランスの特徴を持っています。一方、ルーションは17世紀にスペインから取得され、スペインとカタルーニャの文化的影響を強く受けています。
ラングドックのAOP(旧称コトー・デュ・ラングドック)は、エロー県とオード県のラ・クラプとカトゥルズのブドウ畑に限定されています。この地域はフランスの全ワイン生産量の約4分の1を占め、多様なワインを生産しています。これには、スパークリングワインのブランケット・ド・リムー、豊かで甘い赤の強化ワインのバニュルス、コート・デュ・ルーションのロゼワインなどが含まれます。
この地域の土壌とテロワールは多様であり、地形と同様に変化に富んでいます。全体的に見て、暑く乾燥した地中海性気候が特徴です。ラングドックのブドウ畑は主に沿岸の平野に位置し、ルーションのブドウ畑は崖の上やピレネー山脈のふもとに位置しています。この地域の多くの土地はガリッグと呼ばれる石灰岩質の低地のスクラブランドで覆われています。
ワイン生産の歴史において、19世紀に南フランスに鉄道が開通したことは、地元のワイン産業に劇的な変化をもたらしました。それ以前は、ワインの輸送はほぼ完全に水路に限られていましたが、鉄道の開通により、ラングドックとルーションの手頃な価格の大量生産ワインの需要が急増しました。この工業的な発展が、この地域が成功したワイン産地としての物語の始まりとなりました。
2.主要ブドウ品種
ラングドック・ルーション地方では赤ワインが中心に造られていますが、白ワイン、ロゼワインも幅広く生産されています。主な品種を記します。
赤ワイン
- グルナッシュ
- シラー
- ムールヴェードル
- カリニャン
- サンソー
白ワイン
- グルナッシュ・ブラン
- クレレット
- ブールブラン
- ヴィオニエ
- マルサンヌ
- ルーサンヌ
- ピクプール・ブラン(特にピクプール・デ・ピネ)
ロゼワイン
- 主に赤ワイン用の品種を基にし、白ワイン用の品種もサポートとして使用されます。
3.主要A.O.C.
エロー県
A.O.C.名(読み方) | タイプ | 品種 |
---|---|---|
Picpoul-de-Pinet(ピクプール・ド・ピネ) | B | ピクプール・ブラン100% |
Saint-Chinian(サン・シニアン) | RrB | 複数品種ブレンド |
Saint-Chinian Berlou(サン・シニアン・ベルル)/ Saint-Chinian Roquebrun(サン・シニアン・ロクブラン) | R | 複数品種ブレンド |
Terrasses du Larzac(テラス・デュ・ラルザック) | R | 複数品種ブレンド |
Pic-Saint-Loup(ピク・サン・ルー) | Rr | 複数品種ブレンド |
Faugères(フォジェール) | RrB | 複数品種ブレンド |
エロー県とオード県にまたがる
A.O.C.名(読み方) | タイプ | 品種 |
---|---|---|
Minervois(ミネルヴォワ) | RrB | 複数品種ブレンド |
La Livinière(ラ・リヴィニエール) | R | 複数品種ブレンド |
オード県
A.O.C.名(読み方) | タイプ | 品種 |
---|---|---|
Corbières(コルビエール) | RrB | 複数品種ブレンド |
Boutenac(ブートナック) | R | 複数品種ブレンド |
Fitou(フィトゥー) | R | 複数品種ブレンド |
Limoux(リムー) | RB | R:メルロー主体 / B:シャルドネ、シュナン・ブラン、モーザック |
Limoux méthode ancestrale(リムー・メソッド・アンセストラル) | B | モーザック100% |
Limoux Blanquette de Limoux(リムー・ブランケット・ド・リムー) | B | モーザック90%以上 |
Crémant de Limoux(クレマン・ド・リムー) | rB | 主体:シャルドネ / 補助:シュナン・ブラン、モーザック、ピノ・ノワール |
La Clape(ラ・クラプ) | RB | 複数品種ブレンド |
Cabardès(カバルデス) | Rr | 複数品種ブレンド |
Malepère(マレペール) | Rr | R:メルロー主体 / r:カベルネ・フラン主体 |
ピレネー・オリエンタル県=ルーション地方
A.O.C.名(読み方) | タイプ | 品種 |
---|---|---|
Collioure(コリウール) | RrB | 複数品種ブレンド |
Maury(モーリー) | R | グルナッシュ主体 |
4.VDN/VDLについて
VDN(Vin Doux Naturels)ヴァン ドゥー ナチュレル
ブドウ果汁の発酵中にアルコールを添加し、発酵を停止させることで天然の糖分を多く残す甘口ワインです。このプロセスを「ミュタージュ(Mutage)」と呼びます。1285年にマジョルカ王朝期のアルノー・ド・ヴィラノーヴァによって発見されました。
VDL(Vin de Liqueurs)ヴァン ド リキュール
未発酵のブドウ果汁にアルコールを添加し、発酵を停止させた後、樽で熟成させます。添加されるアルコールは地域によって異なり、オー・ド・ヴィー、マール、コニャック、アルマニャックなどが使用されます。
ラングドック・ルーション地方で生産される主なVDNとVDLは以下の通りです。
VDN(Vin Doux Naturels)
地域 | A.O.C.名(読み方) | タイプ |
---|---|---|
ローヌ | Muscat de Beaumes de Venise(ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ) | RrB |
ローヌ | Rasteau(ラストー) | RrB |
コルス | Muscat du Cap Corse(ミュスカ・デュ・カップ・コルス) | B |
ルーション | Maury(モーリー) | RB |
ルーション | Banyuls(バニュルス) | RrB |
ルーション | Banyuls Grand Cru(バニュルス・グラン・クリュ) | R |
ルーション | Rivesaltes(リヴザルト) | RrB |
ルーション | Muscat de Rivesaltes(ミュスカ・ド・リヴザルト) | B |
ルーション | Grand Roussillon(グラン・ルーション) | RrB |
ラングドック | Muscat de Lunel(ミュスカ・ド・ルネル) | B |
ラングドック | Muscat de Mireval(ミュスカ・ド・ミルヴァル) | B |
ラングドック | Frontignan(フロンティニャン) | B |
ラングドック | Muscat de Frontignan(ミュスカ・ド・フロンティニャン) | B |
ラングドック | Vin de Frontignan(ヴァン・ド・フロンティニャン) | B |
ラングドック | Muscat de St Jean de Minervois(ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ) | B |
VDL(Vin de Liqueurs)
地域 | A.O.C.名(読み方) | タイプ |
---|---|---|
ジュラ | Macvin du Jura(マクヴァン・デュ・ジュラ) | RrB |
ラングドック | Clairette du Languedoc(クレレット・デュ・ラングドック) | B |
ラングドック | Frontignan(フロンティニャン) | B |
ラングドック | Muscat de Frontignan(ミュスカ・ド・フロンティニャン) | B |
ラングドック | Vin de Frontignan(ヴァン・ド・フロンティニャン) | B |
コニャック | Pineau des Charentes(ピノー・デ・シャラント) | RrB |
アルマニャック | Floc de Gascogne(フロック・ド・ガスコーニュ) | rB |
ランシオ
太陽にさらした樽の中で長期熟成させることで酸化作用が進み、特有の色と風味を持つワインです。このランシオの香りは、シェリーやマデイラ、長期熟成を経たアルマニャックなどにも感じられます。
5.まとめ
ラングドック・ルーション地方は、フランス南部に位置する広大なワイン産地であり、その多様な気候と土壌により多彩なワインを生産しています。この地域は主に赤ワインの生産で知られていますが、白ワインやロゼワイン、スパークリングワイン、甘口ワインも幅広く生産されています。以下に、この地域の試験対策として重要なポイントをおさらいします。
地理と気候
地理的範囲: ラングドック・ルーション地方は、地中海沿岸から内陸にかけて広がり、スペイン国境まで及びます。
気候: 地中海性気候が特徴であり、暑く乾燥した夏と穏やかな冬を持ちます。また、トラモンタンと呼ばれる乾燥した冷たい風が吹き、病害のリスクを低減します。
主要ブドウ品種
赤ワイン: グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル、カリニャン、サンソーが主要品種です。
白ワイン: グルナッシュ・ブラン、クレレット、ブールブラン、ヴィオニエ、マルサンヌ、ルーサンヌ、ピクプール・ブランが使われます。
主要A.O.C.
エロー県: Picpoul-de-Pinet、Saint-Chinian、Terrasses du Larzac、Pic-Saint-Loup、Faugèresなど。
エロー県とオード県にまたがる: Minervois、La Livinièreなど。
オード県: Corbières、Boutenac、Fitou、Limouxなど。
ピレネー・オリエンタル県=ルーション地方: Collioure、Mauryなど。
VDN(Vin Doux Naturels)とVDL(Vin de Liqueurs)
VDN: 甘口ワインであり、発酵中にアルコールを添加して発酵を停止させることで天然の糖分を多く残します。代表的なA.O.C.には、Muscat de Beaumes de Venise、Rasteau、Maury、Banyulsなどがあります。
VDL: 未発酵のブドウ果汁にアルコールを添加し、発酵を停止させた後に樽で熟成させます。代表的なA.O.C.には、Macvin du Jura、Clairette du Languedoc、Pineau des Charentesなどがあります。
歴史と発展
歴史: ラングドック・ルーション地方は、19世紀に鉄道の開通により大きな発展を遂げました。それ以前は、水路を使ったワインの輸送に限られていましたが、鉄道により北フランス、イギリス、オランダ、ドイツへの輸送が容易になりました。
現代の発展: この地域は近年、品質向上と多様性の拡大に力を入れており、世界中のワイン愛好家から注目されています。
ラングドック・ルーション地方は、フランスのワイン生産において重要な役割を果たしており、その多様なワインスタイルと歴史的背景はソムリエ試験においても非常に重要です。試験対策として、主要ブドウ品種、A.O.C.、VDN/VDLの特徴とともに、この地域の地理と気候、歴史についても十分に理解しておくことが求められます。
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